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2019 年度 実施状況報告書

聖教から見た鎌倉後期の公武権力と真言密教

研究課題

研究課題/領域番号 18K12512
研究機関高野山大学

研究代表者

坂口 太郎  高野山大学, 文学部, 専任講師 (50724142)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード公武権力 / 後醍醐天皇 / 北条氏得宗 / 頼助 / 元瑜 / 文観 / 密教聖教 / 『西南院文書』
研究実績の概要

本年度は、下記のテーマに即して研究を進めた。
(1)【鎌倉後期の鎌倉幕府と真言密教】鎌倉幕府に仕えた真言僧である元瑜・頼助について調査を進めた。その成果として特筆すべきは、頼助が所持していた如意宝珠(中世密教で最重視された重宝)の正体が判明したことである。すなわち、この宝珠は、かつて東大寺の復興に尽力した俊乗房重源が、伊勢で夢中に天照大神より授けられたものであった。重源が感得した宝珠については、すでに伊藤聡氏が優れた研究を発表しているが、重源死後における宝珠の行方については、さほど注意が払われていなかった。しかし、くだんの宝珠が紆余曲折を経て、最終的に頼助の掌中に帰した事実は見逃せない。頼助は鎌倉幕府の宗教的護持に携わった北条氏出身僧であるだけに、この事実は、鎌倉幕府と密教との関係を考える上でも、重要な論点をなすものと考える。
(2)【三宝院流聖教の流伝と文観の法流】後醍醐天皇を支えた真言僧文観については、網野善彦氏の『異形の王権』を契機として、多くの注目を集めている。醍醐寺三宝院流の正統を自認する文観は、南北朝動乱が始まると、重要な聖教を携えて醍醐寺を離れ、南朝の後醍醐天皇に仕えた。文観は、吉野において、醍醐寺から持ち出した聖教を後醍醐の上覧に供し、自らの正統性を保証する奥書の染筆を請うている。ところが、文観が持ち出した聖教の精粋は、今日醍醐寺に所蔵されているものが少なくない。そこで、文観の法流で相伝された三宝院流の聖教が、いかなる経緯を経て醍醐寺に戻ったのか、この問題を、文観の法流を相伝した南朝皇胤の事績の再検討を通して検討を行なった。
(3)【史料翻刻】高野山西南院に伝来した、重要文化財『西南院文書』の第1巻から第3巻を翻刻し、解題を付して紹介した。とくに、第3巻には、正和2年(1313)における後宇多院の高野御幸に従った供奉人の交名が含まれており、今後の検討が期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

鎌倉後期や南北朝期における政治と仏教の関係について、興味深い史実を発掘するなど、着実に研究を進めているため。

今後の研究の推進方策

本年度で得た研究成果の成稿につとめるとともに、高野山やその他の真言宗寺院に伝来した聖教の調査にできる限り取り組む。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] 重要文化財『西南院文書』第一巻~第三巻2020

    • 著者名/発表者名
      坂口太郎・藤本孝一
    • 雑誌名

      東京大学史料編纂所研究紀要

      巻: 30 ページ: 142-169

    • 査読あり

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公開日: 2021-01-27  

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