研究課題/領域番号 |
18K12513
|
研究機関 | 福井工業高等専門学校 |
研究代表者 |
手嶋 泰伸 福井工業高等専門学校, 一般科目(人文系), 講師 (20707517)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 国有財産法 / 官有財産管理規則 / 公共観念 / 宮城県 / 宮城県公文書館 / 東京 / 東京都公文書館 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、日本の近現代における国有財産管理制度を分析することによって、日本において「公共」の観念がどのように形成・展開し、現代社会に至っているのかということを歴史的に跡付けることを目指している。こうした目的意識に基づいて展開された2019年度の調査研究の結果として、以下2点の研究成果をあげることができた。 ①2018年度に調査によって得られた、明治初期の国有財産管理制度(旧国有財産法が成立する以前の、官有財産管理規則に基づいて国有財産が管理された体制)に関する成果を公表するための追加の調査・分析を行い、結果として、論文の形式で刊行することができた。明治期に官有財産管理規則が制定された後、同規則において「公共」の範囲が地方において実現されるべきものとされ、そのために、地域行政において「公共」観が発生・議論され、その内実が与えられていく過程が明らかになった。また、日本においては、そうした「公共」観は不十分にしか形成されなかったわけであるが、それは行政においては、スムーズな執行が優先されるがために、「公共」の内容が十分議論されなかったことをその要因としていることが明らかになった。これは、日本の近現代を通じて、「公共」の問題を検討するための基盤となるものであると信じる。 ②戦後の宮城県を事例とした土地管理をめぐる諸問題を検討した。特に、松島タワー建設問題に着目し、宮城県公文書館に所蔵されている膨大な公文書を撮影・収集して分析を行い、文化財行政と地域経済との衝突から特別名勝という公共的な土地の在り方が地域でどのように議論されたのかを明らかにすることで、戦後における「公共」観を考える手がかりを得た。この成果については、現在論文として投稿する準備をしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度予定していた2つの研究テーマ(①宮城県を事例とした戦後の土地制度に関する研究、②東京を事例とした大正~昭和戦前期の研究)の内、①は順調に調査を終え、現在論文として発表する準備に入れているが、②については、調査を予定していた2019年度の後半、COVID-19の流行の影響によって、出張ができなくなり、調査を行うことができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度においても、COVID-19の収束がいつになるのか見通せないため、史料保存機関に出張しての調査が困難となることが予想される。また、2020年度においては学会等での研究成果の発信を重点的に行う計画であったが、学会等が開催されない可能性は極めて高いと予想される。加えて、所属する研究機関において、COVID-19の影響から前期すべての授業がオンラインで実施することとなったため、教育に割くエフォートを増加させなければならず、この研究課題に割けるエフォートは減少する。 以上のことから、研究課題の大幅な変更が必要となり、今後は以下のように研究を進めていくこととしたい。 ①出張による調査が必要であった研究テーマについては、同内容をオンラインで検討できるテーマが無いかどうかを調べ、可能であればテーマの変更を行う。 ②学会等での口頭発表を行わず、直ちに論文として慣行することを目指す。 ③研究課題全体の負荷を再検討し、可能であればエフォートを変更する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、2019年度末に実施する予定であった調査のための出張を取りやめ、2020年度に購入する予定であった物品の前倒しでの納入に変更したことによって、それらの差額を次年度に繰り越すものである。少額であるため、次年度において問題なく消化できるものと思われる。
|