本研究は、近現代の日本における、特に不動産を中心とした国有財産の管理がどのようになされていったのかという歴史から、近現代日本が「公共」をどのように実現しようとし、そこにどういった問題があったのかを考察することを課題としていた。そのために、今年度においては、①特別名勝地の管理運営に関する研究成果を公表するための追加分析、②終戦直後の占領期における軍用地の管理に関する分析、の2点を実施し、以下のような成果を得た。 まず、①については、宮城県公文書館などで史料調査を行うことによって、以下のようなことが判明した。即ち、特別名勝の保全という問題においても、これまで本研究課題によって明らかにされてきたような、せっかく行政過程において発見された重要かつ深刻な問題についての議論を深めず、行政過程のスムーズな執行を優先してしまうことによって、社会全体でそうした問題の深化を阻んでいくという構造のあることが明らかになった。この研究成果については、今年度はCOVID-19の影響により発表の準備が遅れ、現在論文として刊行するための審査を受けている段階である。 また、②については、防衛省防衛研究所などで史料調査を行うことによって、以下のようなことが明らかになった。まず、終戦直後の段階で、国内にどれほどの軍用地があるのかを示す史料が発見され、今後各都道府県において国有地処分の具体的事例を検討することができるようになった。また、終戦直後の軍用地処分の法令や指示が系統的に整理できた。これらの研究成果は上記①同様、今年度はCOVID-19の影響により発表の準備が遅れたため、学会で報告するための準備を進めている段階である。
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