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2020 年度 実施状況報告書

戦後歴史学の史学史的研究―日本中世史研究の政治的性格を中心に―

研究課題

研究課題/領域番号 18K12517
研究機関国際日本文化研究センター

研究代表者

呉座 勇一  国際日本文化研究センター, 研究部, 助教 (50642005)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード史学史 / 戦後歴史学 / 中世史 / オーラルヒストリー
研究実績の概要

本年度は、前年度に執筆した論文「網野善彦とベラ・ザスーリチへの手紙」の修正を行った。網野の代表作『無縁・公界・楽』の核心的テーマである「無縁」=「原始の自由」は、ベラ・ザスーリチへの手紙(カール・マルクスの書簡)を読み直すことで得た着想が基になっているという。この網野の証言の妥当性を、多様な資料に基づいて再検討した。
また前川一郎編著『教養としての歴史問題』(東洋経済新報社)に「「自虐史観」批判と対峙する―網野善彦の提言を振り返る」を寄稿した。排外主義・歴史修正主義的な言説が蔓延する現状に対処するヒントを、戦後歴史学に対する網野の提言に求めた。
網野は「新しい歴史教科書をつくる会」に批判的だったが、歴史学界の「つくる会」批判は有効ではないと考えていた。そのことを端的に示すのが、網野の「自由主義史観は戦後歴史学の鬼子」発言である。
網野は天皇制反対論者だったが、天皇制を解体するには、“敵”である天皇制の本質を知る必要があると考えていた。網野は「無縁」の思想や非農業民が天皇と深く結びついていたことに天皇制存続の理由を求めた。ところが、網野の議論は学界からは「天皇擁護論」と批判された。
しかし網野から見れば、天皇制の根深さに正面から取り組もうとしていない歴史学界は“逃げている”ように映っていた。戦後歴史学が天皇制研究をきちんとやらなかったから、「つくる会」にその隙を突かれたのだ、というのが網野の認識だった。網野の議論や認識には疑問もあるが、歴史学界が網野に冷淡だった点は否めない。歴史学界のある種の自閉性は今も続いているのではないか、と本稿では指摘した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、調査などをほとんど実施することができなかった。

今後の研究の推進方策

本研究の方法は、一言で述べるならば、戦後歴史学を担った研究者の政治的・社会的発言の分析である。次年度は石母田正・網野善彦に加え、戦後歴史学の本流を歩んだ中世史家である永原慶二を中心に検討を行う。

前述の「網野善彦とベラ・ザスリーチへの手紙」の発表の場も検討する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染拡大により調査などが実施できず、予定していた旅費等の支出がなかったため次年度使用が生じた。令和3年度は旅費等に充当する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (2件)

  • [雑誌論文] 「自虐史観」批判と対峙する―網野善彦の提言を振り返る2020

    • 著者名/発表者名
      呉座勇一
    • 雑誌名

      前川一郎編著『教養としての歴史問題』(東洋経済新報社)

      巻: なし ページ: pp148-181

  • [雑誌論文] 宣伝される大衆僉議―中世一揆論の再構築2020

    • 著者名/発表者名
      呉座勇一
    • 雑誌名

      荒木浩編『古典の未来学』(文学通信)

      巻: なし ページ: pp406-416

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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