研究課題/領域番号 |
18K12517
|
研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
呉座 勇一 国際日本文化研究センター, 研究部, 機関研究員 (50642005)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 史学史 / オーラルヒストリー / 戦後歴史学 |
研究実績の概要 |
一般書『戦国武将、虚像と実像』(KADOKAWA、2022年5月)を発表した。歴史小説や時代劇において、舞台として最も好んで取り上げられるのは戦国時代である。戦国時代に活躍した武将を主人公とした娯楽作品は、それこそ枚挙に暇ない。したがって、戦国武将の評価は「大衆的歴史観」を考える上で最重要のテーマである。 織田信長や豊臣秀吉や徳川家康といった戦国武将に関しては、だいたいこういう人物だろうというイメージを皆が持っている。その人物像は小説やドラマ、映画などに淵源していることが多いので、人それぞれ違う、ということはあまりない。秀吉は人たらし、家康は狸親父といったイメージが世間一般に広く流通している。 だが、そうした人物像は必ずしも固定的なものではない。我々が抱いている信長像や秀吉像は何百年も前に作られたものではなく、意外と最近、たとえば司馬遼太郎が作ったイメージに左右されている、ということが結構ある。逆に、従来の評価を逆転させた斬新な人物像と思われているものの原型が、実は何百年も前に成立していた、ということもある。 そこで本書では、信長像や秀吉像が時代によってどう変遷したかということと、実際はどういう人だったのかということを明らかにし、それによって、時代ごとの価値観も浮かび上がらせた。 春木直紀編『列島の中世地下文書』(勉誠出版、2023年5月刊行予定)に論文「南朝年号文書研究の新視点―「後南朝文書」との比較から―」を寄稿した。南朝年号文書は、戦後になると、戦前の皇国史観の反動もあり、様式・内容の不自然さから後世の偽作を疑われるようになった。そして従来の近世由緒論では、伝承・由緒を裏付けるために文書が偽作されるという認識が一般的であった。しかし、先に南朝年号文書があり、その文書を利用・解釈する形で伝承・由緒が生成されることもあることを明らかにし、南朝年号文書の新たな活用方法を提示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響で国内出張に大きな制約が出ており、聞き取り調査などに支障をきたしている。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染収束後、聞き取り調査などを進めていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で予定していた調査が実施できなかったため。新型コロナウイルス感染が収束したら、予定していた調査を実施する。
|