研究課題/領域番号 |
18K12521
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小川 道大 金沢大学, GS教育系, 准教授 (30712567)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ボンベイ / 植民地都市 / 鉄道交易 / 歴史GIS |
研究実績の概要 |
令和2年度は、新型コロナウイルスの感染拡大により、インドおよびイギリスでの史資料収集を行うことができなかった。そこで、本年度は、これまでに収集した史資料の整理と分析を行った。本研究は二つの研究課題を設定しており、それぞれについて分析を進めた。 第1課題「ボンベイ市内部の市場形成」に関しては、前年度に大英図書館で収集した、ボンベイ港トラスト(Bombay Port Trust)の報告書を分析し、その管轄下にある25港の貿易品目の整理と、GISを用いた地図上へのプロットを終えた。植民地都市ボンベイの19世紀の市場形成とその変化を議論する準備が整った。在インド・マハーラーシュトラ州立文書館ボンベイ本館で、前年度までに収集をほぼ完了していたボンベイ市の鉄道建設および埋・区画整理に関する史資料を分析し、鉄道路線とボンベイの埋立・区画整理事業との関係を、地図を用いて可視化した。19世紀を通じたボンベイ市内の交易・産業の中心地点の変化と、その市場形成の関係を議論する素地ができた。 第2課題「ボンベイ市の後背地経済への影響」に関しては、18世紀後半にボンベイから、インド西部の現地勢力であるマラーター同盟の中心都市プネーに運ばれた商品の通関税に関する記録が前年度に得られたものの、分析可能な事例数は10程度で、全体像の把握は不可能であった。ボンベイと内陸諸都市を結ぶ、19世紀後半の鉄道貿易に関する経年統計の分析から、鉄道貿易開始による内陸都市の一時的な衰退と復興が見出され、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのボンベイ市の後背地経済への影響を考察することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度にインドで史資料調査を行えなかったことが、研究遅延の主な要因となっている。令和3年度以降は、研究の方向性を修正する。 より具体的に述べると、第1課題「ボンベイ市内部の市場形成」に関しては、想定していたよりも史資料に若干の不足が見られるが分析可能な状況であり、本年度に分析を開始している。第1課題に関して遅れはみられない。 第2課題に関しては、在インド・マハーラーシュトラ州立文書館プネー文館での史資料調査が実施できなかったために、現地語(マラーティー語)史資料が得られず、植民地期以前のボンベイ市と後背地経済の関係を分析することが極めて困難になった。この部分に関して遅延が生じており、研究の方向修正が求められる状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
インドおよびイギリスでの史資料収集が困難な状況にあって、研究対象および手法の変更を迫られている。まずは、現地語(マラーティー語)の流通に関わる史資料は、現在、研究代表者が知る限りにおいて、マハーラーシュトラ州立文書館プネー分館でのみ収集できるため、今後の研究手法は、主に英語史資料の収集に限られる。また本研究は全体として、前植民地期から植民地期への、ボンベイ経済の連続と変化を見ることを目的としていたが、史資料の収集手法の変更にともない、19世紀の植民地期を中心にボンベイ経済の連続と変化を考察することに本研究の目的を変更する。ただし英語史資料であっても、18世紀後半のボンベイ市内の市場形成、ボンベイ市と後背地経済との関係を示すデータは存在するため、これらの収集を可能な範囲で継続し、19世紀を研究対象時期の主たる期間と設定しながらも、より長期的な視野を持ち続けることとする。 史資料の収集に関しては、大英図書館では、オンラインによる史資料の検索、オンラインでの注文が可能であり、本研究代表者は、これまでに同文書館からのオンラインでの史資料取集を行ってきた経験があるため、令和3年度にこれを実施する。さらに在インド・デリーのインド国立公文書館(National Archives of India)においても、オンラインによる史資料の検索・注文の設備・プロセスが確立されつつあり、令和3年度は、こちらも利用する。令和3年度は本研究の最終年度であるが、史資料収集の遅延および研究方向の変更から、大英図書館およびインド国立公文書からの史資料収集を続け、研究の進捗状況によっては、本研究期間の延長を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、インドおよびイギリスでの史資料調査が困難となったため、令和2年度での研究費使用が困難となった。令和3年度には、大英図書館およびインド国立公文書からオンラインで史資料を収集する。必要な史資料のリストは令和2年度末までに作成済みである。
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