研究実績の概要 |
2022年度は、戦争のためロシアへの渡航はできなかったが、ヘルシンキのフィンランド国立図書館で調査することができた。今回は、帝政末期ロシアの代表的な経済紙である『金融、工業、貿易報知』が刊行していた、企業の決算報告集を閲覧し、必要な部分をスキャンした。中でも、日露戦争後のロシア商船とロシア東亜汽船の決算報告を入手することができ、コロナ前のロシアでの調査では欠けていた年をカバーすることができた。また、同じく日露戦争後の時期の、ロシアと中東との貿易に関する記事も複数入手できた。これらの資料も活用し、研究成果をまとめる予定である。 成果発表としては、Asian Review of World Histories (Volume 10, Issue 2, July 2022)に寄稿した、The Launch of the Volunteer Fleet: Late Imperial Russia and the “Empire Route”が刊行された。また高校の歴史総合の補助資料として、「蒸気船と帆船」というエッセイを『山川歴史PRESS』12号(2023年2月)に寄稿した。口頭発表としては、九州歴史科学研究会(福岡大学、6月25日)で「帝政ロシア時代のオデッサ:海運との関係から」という題目の報告を、早稲田大学現代政治経済研究所グローバル経済史研究部会(オンライン、11月22日)で、「セルゲイ・ヴィッテの交通政策再考:世界経済の中のロシア帝国」という題目の報告を行った。また、社会経済史学会大会(オンライン、5月1日)では、パネル「海域アジア経済史研究の回顧と展望」で、ロシア海運史の立場から討論者を務めた。大阪大学歴史教育研究会10月例会(大阪大学、10月22日)では、宇山智彦(北海道大学教授)によるロシアのウクライナ侵略に関する報告に対し、自身の研究を踏まえ、討論者を務めた。
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