本研究は、ヴァイマル初期のドイツで活動した志願兵部隊・義勇軍の経験と、そこで培われた「暴力を辞さないアクティヴィズム」が、戦間期全体を通じ反ファシズムの主体形成にどのように作用したのかを検討することにより、暴力経験から大量殺戮への道を直線的・単線的に導き出そうとする近年の「暴力のヨーロッパ史」研究の再考を促し、ひいては戦間期という時代の再評価に寄与することを目的としている。具体的には、義勇軍出身のナチまたは右翼でありながらも、最終的にドイツにおける反ナチ抵抗運動、あるいはフランス・スペインにおける人民戦線への支援に携わった人びとの経験を歴史学的に分析する。 2023年度は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的拡大による各種影響がようやくおさまり、9月にドイツ・フライブルクの連邦・軍事文書館(Bundesarchiv-Militaerarchiv)、ミュンヘンのバイエルン州立中央文書館(Bayerisches Hauptstaatsarchiv)、アウクスブルク州立文書館(Staatsarchiv Augsburg)で、第一次世界大戦期からヴァイマル共和国期にかけての義勇軍とその出身者に関する未公刊史料を、それぞれ閲覧・収集できた。 研究成果としては、共著である水野博子/川喜田敦子編『ドイツ国民の境界』(山川出版社、2023年)収録の論文において、義勇軍からドイツ共産党へ至ったアレクサンダー・シュテンボック=フェルモアの軌跡を明らかにした。また「ドイツ義勇軍運動の残照と「第三の国」」『史淵』161輯(2024年)において、ヴァイマル共和国中期におけるオーバーラント同盟の政治化問題を、「第三の国」思想との関連において捉えることができた。 またこのほか、書評を1本発表し、国内学会・研究会での報告を3回おこない、1つのシンポジウムをオーガナイズした。
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