研究課題/領域番号 |
18K12537
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高津 智子 九州大学, 人文科学研究院, 専門研究員 (00807191)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 欧州統合 / ヨーロッパ統合 / 冷戦 |
研究実績の概要 |
本研究は米ソの対立が鮮明化した冷戦初期における非公式な 米欧関係の実相を明らかにすべく、そのケーススタディとして「ドイツヨーロッパに関するアメリカ委員会(ACUE)」の活動に焦点を当てたものである。 ACUEはCIAの下部組織であり、表向きは欧州統合を支援するアメリカの民間組織として1948年に設立された。当時アメリカ政府は反響政策の一環として西側陣営の結束及び共産主義勢力の拡大の阻止を図るべく、反共主義で結ばれた西側諸国の超国家的な(supranational)統合の促進を企図していた。 しかし、孤立主義を求めるアメリカ国内の反対、アメリカの関与に否定的な西欧諸国の声や「アメリカ帝国主義」の発現として批判するソ連のプロパガンダ故に、公的な外交ルートとは別に、非公式なルートを通じて欧州統合に関与するためのバックチャンネルとして機能していたのがACUEだった。 同組織は諜報機関関係者のみならずアメリカの財界や学界のリソースを利用することで欧州統合プロセスに影響を行使することを目的としており、とりわけハーバード大学における欧州統合研究が利用された。 具体的にはハーバード大学教授であり1953年から NSCのトップを務めたボウイ(R.Bowie)がACUEの支援した欧州統合研究活動の主体となり、ハーバード大学の研究者グループを統括して欧州統合酵素を立案したり、キッシンジャーとともに同大学内に国際問題研究所を設立したりしてアイゼンハワー政権の対外政策の立案プロセスに一定の影響を及ぼしていたことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点で研究は概ね順調に進展しているが、新型コロナウイルスの影響により海外渡航ができず文書館調査ができなかったため一部研究に変更が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はアメリカの文書館を中心にマルチアーカイヴァルな手法で、ACUEとその欧州統合研究活動に従事した研究者グループの活動実態について分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により海外渡航が不可能となり、予定していた海外の文書館の史料調査ができなかったため次年度使用額が生じた。次年度に旅費として使用する計画である。
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