研究課題/領域番号 |
18K12539
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
上村 敏郎 獨協大学, 外国語学部, 准教授 (20624662)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ハプスブルク君主国 / 出版物 / ネットワーク / プロテスタント / 秘密結社 |
研究実績の概要 |
本研究は、啓蒙専制期ハプスブルク君主国における公共圏、特に権力と言論活動の関係を検討するために、過激な啓蒙思想の流通と関連する3つのコミュニケーション・ネットワーク、①出版ネットワーク、②秘密結社ネットワーク、③宗派ネットワークの関係性と構造を解明し、ハプスブルク君主国における言論活動が「文芸共和国」と言われるような仮想的な知のネットワーク空間にどのような形で関与していたかに留意しつつ、ハプスブルク君主国における啓蒙期知的公共圏が果たしていた政治的機能について検証することを目的としている。 2021年度も新型コロナウィルスの感染状況が改善されなかったため、国外での史料調査については断念し、これまでの史料調査および前年度オンライン上で獲得した史料を改めて分析し、考察を深めることを重視した。 ケルンテンの牧師ザムエル・ザックスの執筆した農民向けの啓蒙書『賢い農民』に関して分析をすすめ、東欧史研究会2021年度大会「近代社会における身体の管理」で研究発表をおこない、その研究成果の一部を『東欧史研究』で公表した。この研究の中では、ザックスがプロテスタントの牧師としてケルンテンにおいて説教および出版物で民衆啓蒙を進めるとともに、秘密結社ドイツ・ユニオンのネットワークとも関係していたことを明らかにした。 また、すでに蒐集してきたウィーンの警察文書と大司教区文書の史料を再検討し、改めて1794年に起きた靴屋の涜神事件と出版ネットワーク、秘密結社ネットワーク、宗派ネットワークの関連性と構造を検証した。その研究成果については現在査読誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度に引き続き、コロナウィルスの感染状況が落ち着くことがなく、海外出張による史料調査等を実施できなかった。その代わり、これまで蒐集していた史料の分析を実施し、成果となる論文の執筆に傾注した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題においては引き続き、これまでの収集史料の分析にもとづいて研究成果をまとめることを目標にする。ただし、必要に応じて、先行研究あるいは海外文書館の複写サービスによる史料収集もおこなう予定である。 ヨーロッパの状況が改善し、調査が可能になった場合、本来おこなうはずだった国外での史料調査は、今年度、本研究の問題意識を引き継ぐ形の別課題に採択されたため、そちらの枠組みで実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染状況によって、予定されていた海外出張による史料調査が実施できなかったため、次年度使用額が生じてしまった。 今年度は、研究図書費あるいは海外文書館の複写サービス等に費用を充てる。研究成果の公表に必要な機器や出張費用などが生じた場合は、必要に応じて使用する。
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