研究課題/領域番号 |
18K12543
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研究機関 | 金沢学院大学 |
研究代表者 |
加来 奈奈 金沢学院大学, 文学部, 講師 (20708341)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ハプスブルク / 外交 / 大使 / ネーデルラント / ブルゴーニュ / ベルギー / 王家の女性 |
研究実績の概要 |
本年度は、ハプスブルク家の外交において重要な役割を果たしたネーデルラント女性総督らの活動に焦点をあて研究を進めた。コロナ禍において、海外へ研究調査に行けなかったため、昨年度までに集めた史料を使用したり、国外からの史料集や研究書を多めに購入したりて、書簡や勘定簿の分析を行い、研究を進めた。そうした中で、近年、王家の女性に関する研究書が多く出版されたり、2020年にもカール5世期のネーデルラント総督の一人であるマリアに関する新しい本が出版されたことから、こうした研究をまとめ、整理・考察することにも取り組んだ。まず、ネーデルラント総督となったマルグリットとマリアの先行研究における注目のされ方の違いについて考察した。マルグリットの研究に関しては、概して長期にわたり人気があるといえ、本格的な研究書から、比較研究の対象としてとりあげられた概観的な研究まで、多く存在する。前述したような王家の女性に関する研究の中でも取り上げられることもあり、外交におけるジェンダー的役割について当時の王家の女性と比較し、広い視点で考察することを試みた。一方、マリアに関しては、それほど多くの研究の蓄積はないが、ハンガリー王妃として、そしてネーデルラント総督としての宮廷研究に関しては、比較的近年に発表されたものが多い。このマリアについて、ネーデルラント就任前の状況を整理し、また、近年、刊行された彼女に関する研究書を整理しながら、東欧のハプスブルク家との関係も視野に入れ、彼女を中心としたハプスブルク家のネットワークに関する検討を進めている。加えて、初年度より取り組んでいる彼女らのもとから派遣されるネーデルラント使節に関する総合的な研究も継続的に進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外調査に行けず、現地の大学図書館を利用してみる予定だった本などはそのままにしてしまった。コロナ禍におけるオンラインの授業準備などに手間取ったことで、論文執筆が遅れ気味である。一方、研究にかかわる新しい本が多く出版されたことから、そうした本に関しての整理・検討は取り組めた。また、昨年投稿した2021度刊行予定の外国語での論文が出版に向けて進んでおり、ベルギーの研究者ともやり取りしている。2022年度に出版予定の辞典の校正なども進めている。少し遅れ気味ではあるが、こうした研究成果の公表も、近いうちに実現すると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も海外調査は厳しい状況にあるので、すでに入手済みの手稿史料や刊行史料を使いながら、分析を進める。最終年度であるため研究の総まとめを行い、特に論文執筆に力を入れたい。まず、外交使節全体に関する研究をまとめ、学術雑誌に投稿を目指す。この一部成果については、2021年秋にフランスで刊行予定の論文集に掲載が決定しており、現在、校正を待っている。加えて、二人のネーデルラント総督に関する論考も、それぞれ発表していきたい。そして、カール5世期におけるハプスブルク家の状況を、宗教や社会に関する内容も含めて、再検討しながら、最終的にネーデルラント総督らを中心としたハプスブルク家の外交に関する論考をまとめていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査に行けなかった分、できるだけ洋書購入にあてたが、それでも余ってしまった。今年も海外調査が難しいようであれば、刊行史料の購入や、史料の電子化などに費やしていきたい。また、昨年度同様に最終年度に関する、コロナ禍のための特別対応などが発表された場合は、内容や研究の進捗状況を考慮したうえで、それを検討することを考える。
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