研究課題/領域番号 |
18K12543
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
加来 奈奈 摂南大学, 外国語学部, 准教授 (20708341)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ネーデルラント / ハプスブルク / ブルゴーニュ / 外交 / カール5世 |
研究実績の概要 |
本研究はカール5世期のハプスブルク家の外交をネーデルラント総督らを中心とするネーデルラントの中枢から考察することで、ハプスブルク外交におけるネーデルラントの意義を明らかにするとともに、16世紀の国際関係においてネーデルラントの中枢が果たした平和構築の一側面を浮き彫りにすることを目的としている。本年度は、科研の最終目標に向けて、カール5世期の後半にネーデルラント総督となったマリアに焦点を当て、彼女の政治的立場や外交について分析することに重きを置き、さらに、これまでの成果を発信することにも取り組んだ。 まずはネーデルラント総督となったマリアに関する研究を整理し、彼女の書簡や同時代の書簡を分析した。特に、彼女とフランス王妃になった姉エレオノールの関係に注目した。これに関した成果の一部をハプスブルク史研究会で報告し、『寧楽史苑』に論文を投稿した。 また、これまで取り組んできた1529年に締結されたカンブレ平和条約に関するネーデルラント使節の論文“Les ambassadeurs des Anciens Pays-Bas et l’execution de la paix des Dames”が、フランスで出版される『La Paix des dames 1529』に記載されるため、その最終仕上げの作業を行い、無事に10月に刊行された。本研究は国際的な研究発信のため外国語で論文を刊行することを一つの目標としており、一部成果ではあるが、このフランス語での論文刊行により、その目標を達成できた。 また、これまで中心的史料として扱ってきた勘定簿の分析のまとめの作業や、ネーデルラントの外交についての全体的な考察にも着手し、これについては年度明けの4月に報告を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度もコロナの影響があり、購入予定の出版物の輸送に遅れが出たりして、全てを年度内に手に入れることができなかった。こうした研究書の入手の遅延などから研究が遅れ気味となっている。
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今後の研究の推進方策 |
コロナの影響もあり、外国からの研究書の遅延を受けて、1年間科研の期間を延長することになったが、現時点で重要な史料・研究書が大まかに入手できた。今後はそれをもとに研究を発展させ、成果をまとめる。まずは、昨年に引き続きネーデルラント総督マリアの時代の分析に重きを置きながら、史料の検討を行っていく。また、ネーデルラント総督だけでなく、総督に助言するネーデルラントの有力貴族の書簡などに注目しながら、ネーデルラント全体としての外交のメカニズムも明らかにしたい。加えて、ネーデルラントの外交の全体的な視点で使節に注目した研究報告を、2022年4月に研究会や学会で既に行っており、そこで有意義な議論ができ、多くの助言をもらうことかできた。そうした内容を踏まえ、本研究の主要な成果となる論文をまとめていく。最終年度となるので、積極的な成果発信を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で、ヨーロッパから本の輸送が遅延したため。遅延していた本が日本に届いたと連絡があったので予定通り購入する。
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