研究課題/領域番号 |
18K12544
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研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
武井 寛 岐阜聖徳学園大学, 外国語学部, 准教授 (10707368)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人種 / 公営住宅 / 都市史 / 住宅政策 / ジェンダー / 都市計画 / 公民権運動 / 階級 |
研究実績の概要 |
4年間の研究プロジェクト二年目にあたる令和元年度は、全国黒人向上協会(the National Association for the Advancement of Colored People, NAACP)に代表される公民権団体が住宅改革家との協力関係のなかで、公正な住宅を求めた活動をいつ頃から公民権と捉え始めたのかを中心に検討した。前半の4月から9月は当初の計画通り、アメリカ合衆国ワシントンDCにある議会図書館で平成29年度から継続的に収集してきているNAACPの史料分析を行った。本史料の裁判記録、委員会記録、そして手紙などを中心に調査し、NAACPが住宅問題を重要な公民権の問題と捉える過程を考察した。また、4月末から5月初旬にかけてワシントンDCの議会図書館で、NAACPの記録を再び収集した。今回は膨大なコレクションの中でも訴訟問題を中心に収集した。さらに、第二次世界大戦の黒人退役軍人の史料(African American Soldiers in WWII)も収集した。本史料は公正な住宅を求めて活動する黒人退役軍人にとって、住宅がいかに重要であったか理解する上で貴重な史料である。また、昨年度投稿したキャサリン・バウアー・ウースターの人種観に関する論文の修正を行い、完成させた。後半の8月以降は、収集した史料の分析を中心に行った。残念ながら令和元年度は2月に目の手術を行ない体調不良の影響が大きく、学会発表やさらなる論文執筆には至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究プロジェクトにおいて最も重要なアメリカでの現地調査を予定通りに行えた。令和元年度は、ワシントンDCにある議会図書館で史料収集を行なった。同図書館にあるNAACPのコレクションはここ数年収集している史料である。今回は1940年代から1970年代にかけて、各州で行われた黒人に対する住宅差別の訴訟に関する史料を収集した。さらに、第二次世界大戦の黒人退役軍人の軍務時代の不満や訴訟に関する史料なども収集した。NAACPのコレクションは、同団体が公正な住宅を求めた活動を検討する上では欠かせない史料である。研究成果の発表という面では、昨年投稿した住宅改革家キャサリン・バウアー・ウースターの人種観に関する論文を完成させた。しかし、令和元年度は目の手術を行なったため体調不良の時期もあり、当初の計画通りにはならなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和二年度は、本研究プロジェクトに関連する二つのテーマに集中したい。一つ目のテーマは、長年追いかけてきた1948年に制限的不動産約款を用いた住宅に関する人種排除の禁止を命じた連邦最高裁判所のシェリー対クレーマー判決(Shelley v. Kraemer)の歴史的意義を考察する。本テーマは長年検討してきたものであり、令和元年度に完成させたかったものであるが、膨大な史料の分析に時間がかかり、これまで論文化できていなかった。今年度こそ制限的不動産約款に関する本テーマを執筆したい。二つ目のテーマは、都市再開発によって、いかに黒人コミュニティの生活に影響がでたか検討したい。第二次世界大戦以降、都市再開発と人種の問題は常に注目されてきた。しかし、1990年代以降は緊縮財政の影響もあって都市再開発に連邦資金を投じることができず、民間の力を利用しながら展開されている。こうした都市再開発の質の変化によって、住宅問題がどのように変化したのか人種問題と関連させながら考察する。本研究では都市住宅政策と人種の関係に着目し、この制限的不動産約款と都市再開発の二つのテーマを検討したい。
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