4年間の研究プロジェクト最終年にあたる令和3年度は、本研究プロジェクトのテーマである1968年公正住宅法の策定過程とその意義をまとめる作業を行ってきた。昨年と同様に、今年度も当初の予定ではゴールデン・ウィークの時期にアメリカ合衆国ワシントンDCに史料収集調査に行き、議会図書館や国立公文書館でNAACPの記録や連邦住宅局の史料調査を行う予定であった。しかし、新型コロナウィルスの影響で残念ながら今年度も調査に行けなかった。今年度の4月から8月にかけては研究自体が予定通り行えないため、これまで収集してきた一次史料と二次史料をもとに1968年公正住宅法に関する分析を行った。これまでの連邦住宅法の歴史的な展開を検討し、いかにして1968年の住宅法に至ったのかを考察した。従来ならば連邦議会における法案の審議に注目されがちな住宅法に対して、この法案に公民権運動団体やその他の外部団体がいかに影響を与えたていたかを検討してきた。しかし、本プロジェクトのまとめとなる1968年公正住宅法に関する論文はまだ未完成であるのが残念である。コロナ禍での史料収集の限界や校務の負担も大きく、なかなか思うようには研究が進まなかったのが原因である。9月以降の後半は、本プロジェクトに関連した研究成果をいくつか発表できた。連邦住宅法の歴史と密接に関連している都市のジェントリフィケーションについては、大類久恵他編著『現代アメリカ社会を知るための63章【2020年代】』で考察した。次に本研究とも関わりの深い住宅における制限的不動産約款がいかなる経緯で撤廃になったのかについて、『大原社会問題研究所雑誌』で発表した。また、制度的人種主義の問題として、警察暴力の歴史について山岸和敬編著『激動期のアメリカ』で考察した。新型コロナウィルスの影響で研究はなかなかうまく進まない中で、研究成果をいくつか発表できたのは良かったと言える。
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