研究課題/領域番号 |
18K12546
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
渡邉 裕一 福岡大学, 人文学部, 講師 (30804314)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 環境史 / 都市史 |
研究実績の概要 |
本研究では、近年注目を集める都市環境史の議論を踏まえ、中世後期から近世にかけての帝国都市アウクスブルクを事例に、都市と自然環境との相互関係および都市の生活環境の実態を、都市生活に欠かせない必需品である「水」という問題領域に着目して解明することを目的とする。 2019年夏、アウクスブルクの歴史的な水利システムが「ユネスコ世界遺産」に登録され、記念カタログや論文集などの重要文献が多数刊行された。それらの成果を消化する一方で、世界遺産登録の理念とは異なる歴史学的な意義を踏まえて、アウクスブルクの水利システムの歴史を整理した論文を『西洋史学』の特集「環境史の課題」に発表した。また、九州西洋史学会の2020年度秋季大会にてシンポジウム「ヨーロッパ史における水の資源化とその管理・統制」を企画し、同時に本科研プロジェクトの成果として「帝国都市アウクスブルクにおける水の利用とその管理」と題した研究報告を行った。シンポジウムの成果は、2021年3月刊行の九州西洋史学会編『西洋史学論集』(58号)にて特集化されて、発表することができた。 しかし、「研究実施計画」に照らしてみたとき、研究は順調に進んでいるとは言えない。新型コロナ感染症の世界的な拡大にともない、計画していたドイツでの資料調査が中止せざるを得なかった。そこで、2020年度を最終年度としていた当初の計画を変更し、2021年度までの研究の継続を申請することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要でも記したが、世界的な新型コロナ感染症の拡大のため、2020年3月に予定していたドイツ出張をキャンセルせざるを得なった。一年目に続き、現地での史料調査が行なえなかったことにより、本研究プロジェクトの計画は遅れることとなり、2020年度を最終年度としていたが、2021年度も引き続き研究を進めるべく、継続申請を行った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2021年度は、新型コロナ感染症の影響がどれほど長引くか判別としないが、状況を見極め、可能であれば現地での史料調査を実施したい。場合によっては、現地での十分な史料調査が見込めないこともあり得るため、刊行史料で調査が可能な研究テーマへの重心変更なども柔軟に行ったうえで、中近世アウクスブルクにおける都市と水の相互関係について、多角的な視点から考察を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症パンデミックにより、本研究プロジェクトの当初の計画を変更せざるを得なかったため。なにより、予定していたドイツでの資料調査を断念せざるを得ず、作業プロセスの再考を余儀なくされた。2021年の感染状況は見通せないため、もし可能ならば渡航費に、ドイツ渡航が難しい場合には、本科研プロジェクトに関わる帝国都市アウクスブルクの水利関係に関わる世界遺産登録に合わせて刊行された多数の文献、および関連文献の収集に残額を使用することとしたい。
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