研究課題/領域番号 |
18K12547
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研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松浦 真衣子 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 准教授 (40737235)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 史料整理 / マイノリティ |
研究実績の概要 |
今年度はコロナウィルス感染症の世界的拡大により、2020年3月に予定していた現地調査を実施することが出来なかった。そのため、収集済みの書籍や史料の整理を行った。 第一に、キクラデス諸島には古くからカトリック教徒が定住し、19世紀まで島々の経済活動の中心を担っていた。島々のカトリック教徒と正教徒の経済的な利害関係から、ギリシャ独立戦争前後に生じた宗教をめぐる論争を考察し直すため、本年度はギリシャのマイノリティのアイデンティティ形成に関する史料を整理していった。 まずは、同時並行で継続しているバルカンの言語的マイノリティ、ヴラーフのアイデンティティ形成を分析した。今年度、バルカン研究者と共にヴラーフ研究会を2度開催した。その中で、言語的差異を持つ集団がいかなる状況で自らを、マジョリティ(ギリシャ人)とは違った「他者」と名乗るのか分析した。今後は、キクラデス諸島のカトリック教徒のアイデンティティ形成過程と比較して、宗教・言語マイノリティの置かれた状況の差異を分析していきたい。 第二に、キクラデス諸島における聖母マリア信仰の文化人類学上の先行研究を整理した。キリスト教圏で著しい社会的変容が生じるとき、聖母カルトが流行する事例が散見される。ギリシャでは19世紀後半にこの現象が顕著になる。ギリシャ独立後、聖母マリアは最初の聖人として国民国家の象徴となっていくが、このきっかけとなったのがティノス島における奇跡を起こす聖母像の発掘であった。今後はこの事件をめぐる議論を分析し、国家の聖母マリアのシンボルが、国民国家の女性像形成にいかなる影響を与えたか分析していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の影響で現地調査が出来ず、必要なデータをまとめることが出来ないため。
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今後の研究の推進方策 |
ギリシャでの現地調査が可能になった場合、ティノス島へ赴き、カトリック教徒の集落で聖母マリア像に関する聞き取り調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症の蔓延により、研究の進行が遅れているため。
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