研究課題/領域番号 |
18K12547
|
研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松浦 真衣子 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 准教授 (40737235)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | グロー バ ル ヒス トリー / 海から見た歴史 |
研究実績の概要 |
今年度もコロナ感染症の拡大により現地調査を行うことが出来なかったので、これまで収集した史料をまとめた。 前年度はキクラデス諸島の土着信仰の対象だった聖母が国民国家シンボルとなっていく過程をまとめた。本年度は、もともと自給自足的な経済活動を営んでいたキクラデス諸島が、海運を通じていかにグローバル経済に取り込まれていくか、先行研究をまとめながら概観した。 18世紀は、オスマン帝国の西ヨーロッパとの貿易が徐々に盛んとなり、経済的に繁栄した時代である。18世紀前半はイオニア諸島が西ヨーロッパの交易拠点として繁栄していたが、18世紀末になると、キクラデス諸島も世界経済の周縁に組み込まれ、特にマルタや黒海沿岸と活発な交易を行っていく。主にサントリーニ島、ミコノス島が海運の拠点となり、他方でシロス島には造船所がもうけられ、海運業を中心にキクラデス諸島全体の経済的発展がみられた。とはいえ、イオニア諸島や東エーゲ海などと比較するとキクラデス諸島の18世紀の海運は小規模にとどまっている。徐々に発展していった当該地域の経済が大きな変化を遂げるのは、移民・難民が大量に流入するギリシャ独立戦争以降であると推測することが出来る。 他方で、他の地中海海域と比較すると、キクラデス諸島海域の地域的まとまりは特徴的に強い。この文化的・経済的なまとまりは、共通の宗教的伝統に反映された。キクラデス諸島で一般的に船に命名された名前は、聖母マリアである。このように、地域経済で活動する船乗りたちは、土着の信仰をシンボルとした地縁を維持していたことが分かった。 今後は、当該地域の緩やかな経済発展が移民・難民の流入により、どのように変化したかを分析していく予定である。その中で、地域経済のシンボルとされた聖母マリア像が社会変化の中で以下に摂取され、変化していったかを分析したい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染症の拡大で現地調査が難しく、資料収集が困難だったため。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、ギリシャ独立後のアンドロス島の学校教育の史料を入手している。ここに登録されている生徒の家庭の出身地、職業をまとめ、ギリシャ独立前後で島の住民構成がいかに変わったかを確認する予定である。また、長期休業期間に現地調査を行い、造船所などの史料を入手しつつ、キクラデス諸島で海運業に携わる労働者階級がどのような地縁で構成されていたのかを調査する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症拡大のため、現地調査を実施できなかった。
|