研究課題/領域番号 |
18K12548
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岡田 真弓 北海道大学, 観光学高等研究センター, 准教授 (80635003)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 先住民族 / アメリカ / NAGPRA / 遺骨 / 副葬品 / 発掘 / 返還 / パブリック考古学 |
研究実績の概要 |
本研究では、アメリカにおける合衆国有地および部族保有地から発掘あるいは発見された先住民族の遺骨・副葬品の取扱に係る法制度(NAGPRA等)およびその運用実態を理解し、今後日本でも整備が急がれているアイヌ民族の精神文化に配慮した埋蔵文化財の管理体制構築の示唆を得ることを目的としている。主な研究方法は、①アメリカの埋蔵文化財の取扱およびアメリカ先住民族の文化遺産保護に関する現行法を理解するための文献資料調査、②発掘調査や建設工事等によって発掘・発見されたアメリカ先住民族の遺骨・副葬品の管理や返還に携わった経験を持つ関係者に対するヒアリングである。 今年度は、(1)研究成果を論文にまとめ、(2)とくにハワイ先住民とNAGPRAに関する文献資料調査を進め、(3)年度後半にアリゾナ州ツーソンのフォローアップ調査とハワイ州での新規現地調査を予定していた。 (1)調査成果の一部を英語論集に投稿し、Pathway to Decolonizing Collections of Ainu Ancestral Remains: Recent Developments in Repatriation Within Japan, in Meloche, C.H. et al.(eds.) Working With and For Ancestors: Collaboration in the Care and Study of Ancestral Remains (Routledge, 2020)として発刊した。 (2)NAGPRAに関連するハワイ州の法制度の整理とハワイ先住民の遺骨等返還事例に関する文献資料調査を行った。 (3)covid-19感染拡大のため、現地調査をさらに延期。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
全世界的なcovid-19感染拡大のため、昨年度に引き続き、今年度予定していた現地調査を行うことができなかったため。アリゾナ州およびハワイ州の状況については、現地関係者とビデオ会議やメール等でフォローアップしたものの十分ではない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、①引き続きハワイ州におけるNAGPRA運用に係る法制度やハワイ先住民の遺骨等返還の事例に関する文献資料収集、②アリゾナ州ツーソンの関係者に対するヒアリングを通じたフォローアップ調査、③ハワイ州でハワイ先住民の遺骨・副葬品の管理や返還に携わった経験を持つ関係者に対するヒアリングを実施する。 アリゾナ州ツーソンでは、アメリカ先住民コミュニティが先祖の遺骨・副葬品の管理に求める文化的な配慮cultural sensitivityを徹底するための取組に着目し、コミュニティがアメリカ陸軍工兵隊、発掘調査会社、建設工事従事者、博物館などの非先住民側にむけて実施しているプログラムに焦点を当てる。ハワイ州については、出土したハワイ先住民の遺骨等を適切に保護し、円滑にコミュニティに返還するための行政手続について調査するとともに、担当する行政組織(州立史跡保存局と墓地委員会)に対してヒアリング調査を行いたい。covid-19の影響により現地調査の実施は困難であると予想されることから、ビデオ会議やメール等を用いたオンライン調査で代替することを考えている。 なお、研究成果の一部を2021年秋出版予定の和文論集に寄稿する予定である。また成果の総括は、2022年7月の世界考古学会議で口頭発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた現地調査を実施することができなかったため、残高が生じた。 本来であれば、当該残高は現地調査旅費に充当されるべきだが、アメリカへの渡航の見通しがたたないので、今後の文献資料収集およびオンライン調査に必要な経費等に充当する予定である。
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