今年度は、国立公園内におけるNAGPRAの運用について、文献資料調査とともに、内務省国立公園局所属の考古学者へのヒアリングを行った。具体事例として、世界遺産「ホープウェル儀式用土塁群」に登録されたホープウェル国立歴史公園に着目し、当該地域におけるネイティブ・アメリカンの出土遺骨及び副葬品の管理のあり方、また世界遺産登録(2023年)のプロセスにおける関係するネイティブ・アメリカンとの連携について情報収集を行った。当該公園には、今日ホープウェル文化として知られるアメリカ先住民族の祖先たちが築いた土塁群を内包する6つの独立した遺跡が含まれている。一方で、移住政策の結果、遠方で暮らす本来の関係するアメリカ先住民トライブ(連邦政府認定)は46にものぼり、国立公園局はすべてのトライブに対し、土塁から出土した先祖のご遺骨や副葬品の慰霊および取扱いについて協議を行った。また、こうした協議を踏まえ、当該土塁群のインタープリテーション計画も策定された。 これまでの調査から、合衆国有地および部族保有地から発掘または発見された先住民族の遺骨・副葬品の管理及び返還を円滑にすすめるため、地域のネイティブ・アメリカンの主体性とともに、アメリカ陸軍工兵隊や国立公園局といった関係組織の理解と連携が果たす役割が重要であることが明らかになった。NAGPRA運用におけるアメリカ陸軍工兵隊および国立公園局の取組については、文献調査およびヒアリング調査から得られた論点を論文としてまとめて公表する予定です。
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