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2018 年度 実施状況報告書

中国新石器時代から初期王朝時代の土器利用に関する学際的研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K12551
研究機関金沢大学

研究代表者

久保田 慎二  金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 特任助教 (00609901)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード土器利用 / 新石器 / 初期王朝時代 / 雑穀文化圏 / 学際研究 / 竈
研究実績の概要

本年度は、当初の予定通り、初期王朝期である二里頭文化の土器組成を整理したうえで、器種ごとに使用痕の観察を行った。共同研究機関である河南省文物考古研究院の協力のもと、出土土器数や組成が適当と考えられる新峡遺跡および薛村遺跡の土器を対象とした。これらの土器の望遠レンズを用いた写真撮影、法量の測定、写真に基づく土器容量の計算などを具体的な作業として行った。
特に大きな収穫が得られそうな土器として、深腹罐が挙げられる。この深腹罐にのみ、胴部中位の一側面だけに泥漿が塗布され、被熱するという特異な使用痕を見出すことができた。近似する使用痕は日本の古墳時代後期の長胴甕によく見られるため、これは竈の使用によって残された痕跡であることが推測される。二里頭文化では土器底部の丸底化を根拠に竈の使用が指摘されたことがあったが、竈自体の検出もほとんどなく、その実態は不明であった。しかし、今回の土器使用痕調査によって、やはり竈が使用された可能性が高い点を明らかにすることができた。あわせて、深腹罐胴部の泥漿は竈に据え付ける際のものと考えられるため、鬲や円腹罐をはじめとする他の煮沸器は竈ではなく炉で使用された可能性が高い。そうであれば、二里頭文化の火処には炉と竈が存在し、竈では深腹罐による雑穀の蒸し調理、炉では副食調理が行われたことが想定される。これは、本年度に行った蒸し調理実験による土器使用痕との比較からも補強できる。
その他、理化学分析を専門とする研究協力者に同行いただき、各器種の土器胎土および一部の付着炭化物のサンプリングを行った。一部の分析結果では、幅広い土器から雑穀のマーカーが検出されており、考古学的にみた土器利用との整合性を検証していく作業が必要となっている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

調査の遂行やその内容について、すべて当初の計画通り進んでいる。
特に河南省文物考古研究院に提供してもらった資料は、二里頭文化の典型的な土器がすべてそろっており、本研究に最適な資料である。また、土器使用痕調査や残存脂質分析に係るサンプリングにも極めて協力的であり、順調に進捗している。
逆に、資料数が当初の想定よりも多いため、あるいは観察資料を絞ることも必要になるかもしれない。当初の計画では、来年度は新石器時代末期の土器資料についても観察を行うことになっている。これを実現するには、土器の復元率や使用痕の残存状態などを考慮しながら、ある程度、対象資料を選定したい。
その他、国際学会における発表や本研究を紹介するための論文執筆なども順調に進めることができている。

今後の研究の推進方策

2019年度以降も、基本的には本年度と同様の手順で進めていく。ただし、実績概要にも記したように、深腹罐の利用について竈の使用が想定される状況になっている。竈研究は日本考古学で積極的に進められてきた研究であり、中国ではいまだ蓄積がほとんどない。したがって、機会があれば、中国側のカウンターパートを日本に招聘し、日本の竈使用土器を観察し、意見交換を行うことができればと考えている。
その他、研究成果の発表については、現在、すでに10月に河南省洛陽市で開催される学会で本研究の成果を発表することが確定している。それ以外にも、国内外の学会で成果を積極的に発信していく。また、深腹罐と竈の問題については極めて重要な成果であるため、できるだけ早い時期に研究の目途をつけ、論文化していきたいと考えている。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)

  • [国際共同研究] 河南省文物考古研究院(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      河南省文物考古研究院
  • [雑誌論文] 中国新石器時代末期から初期王朝時代の土器利用に関する学際的研究2018

    • 著者名/発表者名
      久保田慎二
    • 雑誌名

      月刊 考古学ジャーナル

      巻: 716 ページ: 28-31

  • [学会発表] 中国新石器時代末期陶鬲分布拡大的背景―以陶寺遺址的分析為主―2018

    • 著者名/発表者名
      久保田慎二
    • 学会等名
      中国社会科学論壇・早期都邑文明的発現研究与保護継承 曁陶寺四十年発掘与研究国際論壇
    • 国際学会
  • [学会発表] 従日本看下七垣文化的幾個問題2018

    • 著者名/発表者名
      久保田慎二
    • 学会等名
      第2届 中国考古学大会
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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