本研究は、中国新石器時代末期から初期王朝時代の黄河中流域における土器利用の実態を、型式学的検討や使用痕分析、残存脂質分析などの多様な方法を用いて解明することを目的とする。 2019年度は、2018年度に行った土器組成の整理と土器使用痕分析の基礎の上に、さらに新石器時代から初期王朝時代の土器について、使用痕分析および残存脂質分析を継続して行うことを第一の目的とした。また、特に煮沸土器の主要な調理対象となる雑穀の利用方法を整理するため、華北地方の農村にて民族調査を行う計画を立てた。 土器使用痕分析および残存脂質分析については、共同研究機関である河南省文物考古研究院の西山工作站にて、薛村・新峡両遺跡出土土器を対象に現地調査を行った。その結果、特に深腹罐の使用方法について竈との関連をより明確にし、さらに円腹罐の使用痕との明確な違いを明らかにした。残存脂質分析については、多様な器種からキビのマーカーを検出し、器種による差異を明確に抽出することができなかった。今後は、さらにサンプル数を増やすことで、器種による使い分けを明らかにしていきたい。 民族調査については、雑穀収穫期である11月に陝西省神木市新窯溝村にて行った。収穫から加工、調理に至る一連の過程を実見し、雑穀の種類による加工・調理方法の差異について、一定の傾向を把握することができた。これにより土器の器種による使い分けとアワ・キビをはじめとする各雑穀の利用方法の対応関係について、一つの手がかりを得ることができた。
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