研究課題/領域番号 |
18K12553
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
内記 理 京都大学, 文学研究科, 助教 (90726233)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ガンダーラ / 浮彫画像帯 / 考古学 |
研究実績の概要 |
本年度挙げることのできた最大の成果は、パキスタン現地への渡航を成功させたことである。11月にパキスタン渡航を実施し、主にパンジャーブ州に所在する遺跡の調査と、博物館における遺物の調査をおこなった。とくに、ラホール博物館はガンダーラ地方シクリ遺跡出土の浮彫画像帯の良好な一括資料を所蔵しており、そこでは浮彫画像帯を研究する上では検討を欠かすことのできない資料の調査を実施することができた。渡航中、イスラマバードにおいて日本とパキスタンの文化的なつながりについての講演をおこなった。今後の現地調査の継続のために必要な現地研究者との交流を深めることができた。 その他に海外では、6月にオーストリアのウィーンにおいて開催された、西北インドのシャーヒー時代の歴史・文化にかかわるワークショップで口頭発表をおこなった。 国内では、主にラニガト遺跡から出土した浮彫画像帯を整理する作業を進めた。ラニガト出土の浮彫画像帯については、現段階までの分析結果を整理し、3月に論文集への入稿を終えた。 このほか、ガンダーラ彫刻の編年にもかかわるカローシュティー文字についての初歩的な分析を始めた。そこで得られた予察的な分析結果を、10月に開催された日本オリエント学会第61回大会で電子発表した(口頭発表の予定だったが台風19号の影響により大会自体は中止され、ウェブ上での電子発表としての扱いに切り替えられた)。その発表内容は論文にまとめすでに投稿しており、現在査読結果を待っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度におこなったタレリ遺跡出土の浮彫画像帯資料の整理に引き続き、本年度はラニガト遺跡出土の資料の整理を集中的に進めた。本年度はそれだけでなく、現地渡航が容易ではないパキスタンへの渡航に成功し、知見を深めることができた。よって、当初の計画以上に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は前年度に引き続き、パキスタンへの現地渡航をおこなう予定であった。また、7月にバルセロナで開催される国際学会で、浮彫画像帯資料の整理状況について口頭で発表する予定であった。さらには、8月にソウルで開催される国際仏教学会におけるガンダーラ彫刻の地域性にかかわるセッションでの口頭発表が決定していた。しかしながら、新型コロナウィルスの世界的な蔓延により、学会の中止ないし延期が決定され、パキスタンへの渡航も実現可能かどうか現段階では判断できない。もし今年度海外調査が困難である場合は、これまでに入手することのできた浮彫画像帯資料にかかわるデータの整理を優先的に進め、可能であれば国内での成果発表を推進したい。
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