2021年度においては、コロナが依然として猛威を振るっていたため、研究調査活動をおこなうことができなかった。もし海外調査が可能となった場合にはパキスタンへ渡航し、現地で調査することを計画していたが、結局その機会は得られなかった。また、2020年から2021年に延期となっていた国際南アジア考古学・美術史学会(7月、スペイン・バルセロナ開催)と、国際仏教学会(8月、韓国・ソウル開催)についても、開催されるならば出席し、英語による口頭発表をおこなう予定であったが、こちらも再度、2022年に延期された。それ以外にも、12月に招聘されていたドイツ・ヴュルツブルクでの国際ワークショップも延期となり、海外で議論する機会はことごとく失われた。このように、国内外問わず移動することが困難な中にあって、本年度は昨年度に引き続き、これまでに集めた調査データを整理し、それらに基づいた研究の推進をおこなった。まず、これまで整理した資料のうち、パキスタンのタレリ遺跡出土資料を分析し、ガンダーラにおける同寺院址の位置づけについて検討した。その内容は、ハーバード大学における講演会(オンライン)で口頭発表した。また、同じくパキスタンのラニガト遺跡出土資料を分析し、仏像の出現時期について検討した。こちらは、京都大学人文科学研究所で開催された研究会において口頭発表した。さらに、2019年度におこなったパキスタン現地渡航を踏まえ、中国の仏教僧玄奘が訪れた時代のタキシラの位置についての再検討をおこなった。従来の通説とは異なる仮説を提示する内容となっており、オリエント学会で口頭発表した上で、同会の学術誌『オリエント』に投稿し、掲載された。また、仏教文化がガンダーラからタリム盆地へ、どのような歴史的背景のもとに伝播したかを検討し、さらに、中国において仏教文化がどのように展開したかについても検討した。
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