| 研究課題/領域番号 |
18K12554
|
|---|
| 研究機関 | 九州大学 |
|---|
研究代表者 |
米元 史織 九州大学, 総合研究博物館, 助教 (40757605)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2019-02-01 – 2023-03-31
|
| キーワード | 階層社会 / 筋骨格ストレスマーカー / 古墳時代 / 江戸時代 / ３D |
|---|
| 研究実績の概要 |
本研究の目的は、古人骨の形態、特に筋付着部の発達度分析を用い、社会的格差の拡大が人間の身体活動の多様性に与えた影響を検討し、その歴史的な展開過程を明らかにすることである。主な対象は、日本列島において階層化が進行した時代である古墳時代の古人骨であり、社会の階層化に伴い、生業活動に直接的に従事しない特権階級や専業集団の出現など個人の役割・身分が確立していく過程において、性別や年齢、身分・階層ごとに被葬者間の身体活動の差がどのようにあらわれるのかを検討することを目的としている。
2020年度は新型コロナウイルス感染症のため外部機関への資料調査が困難であった。また、年度前半は所属機関へ出勤することも困難であったため、対象とする時代の報告書掲載のデータ整理を行った。年度後半では、九州大学総合研究博物館所蔵の古墳時代人骨の調査と、すでに収集している江戸時代人骨資料のデータの再検討、及び当館所蔵古人骨資料の３Dデータの生成を中心に行った。
また、階層社会の比較モデルとして使用する予定である江戸時代の人骨のMSMsデータを用いて、都市江戸（現東京都）から出土した武士層と庶民層に属する人骨のMSMsの個体間比較を行った。武家の人々は17世紀後半以降甕棺に埋葬されていたため、甕の型式編年によって詳細な時期比定を行うことで、MSMsパターンの時期による違いを検討し、ある時期までは武士的なMSMsパターンを共有しない個体が存在するが、それ以降はほぼすべての個体にパターンが共有されている、という過程を明らかにした。その結果を論文として投稿中である。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症のため、外部機関への資料調査を行うことができなかったことで、九州島以外の資料の収集が大幅に遅れている。古人骨資料は大学博物館や医学部所蔵の場合が多く、2021年度も場合によっては調査が困難な状況が続くことが予想されるため、九州大学総合研究博物館やすでに収集した江戸のデータで研究を行うことに方針を転換する予定である。
|
| 今後の研究の推進方策 |
当面は新型コロナウイルス感染症対策のため資料調査に行ける範囲が限定的である。申請者が所属する総合研究博物館の資料及びすでに収集した江戸時代人骨の分析を進めていく予定である。まずは、江戸時代人骨を用いて階層社会のモデルを構築する。当初の研究計画には含まれていないが当館所蔵資料を対象とした３Dスキャナーを用いた研究も行っていく。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は新型コロナウイルス感染症のため学外への資料調査に行くことができず、また研究補助者や学生アルバイトの雇用も少人数に抑えたことにより、前年度未使用額が生じた。本年度の前半も、大学での講義などにおける感染症対策を優先すると、県外の外部機関に資料調査へ行くことは困難であると予想される。そのため、当初予定していた研究計画通りでは研究の進行が困難と考える。そこで、感染症対策を徹底したうえで学生アルバイトを雇用し報告書データの整理・入力作業を行う。また、従来の研究では予定していなかった３Dスキャナーを用いた頭蓋骨の調査を行い、古墳時代の人骨の頭蓋形質の調査を行う。全国的に分析対象を広げる前に、九州島内の古墳時代人骨の詳細な検討を行っていく。
|
