本研究の目的は、日本列島の手工業における土器生産の分業がはじまる社会背景を検討することである。特に、北部九州地域の弥生時代中・後期の埋葬棺である大型専用甕棺を対象に、土器生産体制や移動現象からみた社会関係の変化を検討した。分析は、考古学的手法に基づく型式学的検討および地球科学的分析手法を用いた胎土分析を併用した。大型専用甕棺および関連資料のデータベースの作成および胎土分析を実施することで、大型専用甕棺と日常土器・赤彩土器との関係について検討した。埋葬にともなう土器の利用は多くの地域や時代で確認される事象であり、九州の弥生時代を中心とするケーススタディとして位置づけることができる。
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