研究課題/領域番号 |
18K12559
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
河野 正訓 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 主任研究員 (60634623)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 古墳時代 / 出土品 / 農工具 / 外来系 |
研究実績の概要 |
コロナ前に実測撮影などの調査した古墳出土品の基礎的な報告をまとめて、論文や資料紹介として投稿した。2020年度に刊行したものとして、①岐阜県船来山古墳群の外来系農工具からみた渡来系移住民の動向に関する研究、②山口県見島ジーコンボ古墳群の被葬者についての研究、③古墳時代の鉄柄斧(柄付手斧)に関する研究、の3本ある。 ①は船来山古墳群からの出土品を検討し、外来系農工具が古墳時代後期に船来山古墳群でよくみられる現象の背景に、朝鮮半島からの渡来系移住民の移住を想定した。また、前期古墳やその後の古代の集落動向と、後期の渡来系移住民との関連性についても研究を行った。②は鉄刀子など出土した見島ジーコンボ古墳群の被葬者像について、過去の研究事例をまとめ、渡来系移住民の島への移住を否定した。③は古墳時代の前期から中期にみられる日本列島の鉄柄斧の変遷や系統を整理し、従来朝鮮半島系とされてきた鉄柄斧であったが、もともとは伽耶地域に遡源を求めることができる一方で、日本列島内で連続的に系譜を追うことができ、朝鮮半島出土品のなかには倭系遺物として認識できる鉄柄斧がある事についても指摘できた。 また、現在投稿中の論文は2つある。山口県赤妻古墳出土品の農工具を含む来歴調査の研究、及び、朝鮮半島の大伽耶地域で流通した鉄製品に関する研究である。 このほか東京国立博物館内の古墳時代の外来系農工具に関する調査研究に関する展示を平成館考古展示室にて行い、研究の成果を一般にもわかりやすく還元した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のため出張をともなう調査ができない状況が続いている。そのため、韓国の博物館、日本全国の博物館、埋蔵文化財センター、教育委員会が所蔵する外来系農工具の調査研究を予定していたが、まったく行えない状況であった。さらに、関連する特別展示や常設展示にも訪れることができず、関連書籍や論文の収集にも困難をともなった。そのため当初計画案では、当該年度には調査が完了している予定だったが、予定通りに前進することができなかった。 しかしながら、申請者が所属する東京国立博物館内の出土品については、限定的な状況であったにせよ調査研究を進めることができた。当初計画案とは異なるが、東京国立博物館内の外来系農工具の実測図の作成、写真撮影、3DCT撮影を中心にして、山梨県大丸山古墳出土品など基礎的な調査研究を行った。また、東京国立博物館内の古墳時代農工具の集成を行い、エクセル表としてまとめる作業を行なった。集成はすでに約3割が完了し、最終年度に完了させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍のため当面、出張をともなう調査研究は行うことができない。しかしながら、研究を停滞させないために、所属する東京国立博物館内の古墳時代出土品を中心とした調査研究に切り替える事にした。とりわけ山梨県大丸山古墳出土品や京都府穀塚古墳出土品など、古墳時代の外来系農工具を理解するうえで、欠かせない作品を多数所蔵する利点を生かし、実測図の作成、写真撮影、3DCT撮影などの調査を継続して行う。 また、東京国立博物館の日本考古の作品は約4万件収蔵されているが、そのうち古墳時代の農工具が何件あるのか、具体的なデータがないため、集成して報告書として刊行する。 これらの基礎的な調査研究をもとに、古墳時代の外来系農工具について実証的に調査研究を行い、論文として発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
全国的な新型コロナウィルスが流行したため、国内外の調査旅行ができず、予定していた研究を進めることができなかった。 最終年度はコロナウィルスの流行が収まった場合に、調査研究できるように旅費を計上し、また、報告書を刊行するための刊行費用や書籍代などとして使用したい。
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