研究課題/領域番号 |
18K12560
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
山藤 正敏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (20617469)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シルクロード天山北路 / 考古学踏査 / キルギス共和国 / チュー渓谷 / セミレチエ / ソグド / 交易都市 |
研究実績の概要 |
本年度は、キルギス共和国北部チュー渓谷の考古学踏査を予定どおり実施した。踏査範囲を確定し、また、考古遺跡の所在の大まかな傾向を把握するために、既知の大規模遺跡を訪問すると同時に、今後対象とする可能性のある範囲を広く巡検した。 1)踏査対象地域の確定 周辺の調査状況や本研究にとって最も効果的な地域を絞り込んだ結果、当初予定していたよりも西寄りのチュー渓谷西部を踏査対象として選択することになった。キルギス共和国側のチュー渓谷西部を縦断するように、東西35km、南北50kmの範囲を踏査対象地域として設定した。この踏査地域では、以下の3つの特徴的な地勢を記録した。a)北半部の沖積平野。南のアラ・トー山脈から北に注ぐ小河川が無数に流れ、多くの段丘が形成されている。b)南半部の緩斜面。調査地を南北に貫流するカラ・トー川により東西に分かれる。c)南端山麓の丘陵部。ソヴィエト時代の大規模な農地開墾以前の地勢を留める。 2)既知・新規遺跡の記録 計21遺跡を記録・登録した。これらは、都市、短期逗留地、城塞、囲壁、墳丘墓(クルガン)、土器散布地、に分類できる。「都市」は、いずれも既知の6遺跡を訪問・記録した。地域の拠点であったシス・トべ遺跡(古代名ヌジケト)、やや小規模な3つの都市(ベロボドスコエ、アク・トべ・スレテンスコエ、アク・トべ・チューレクスコエ)、また、「街」レヴェルの2つの小型遺跡に細分できる。いずれも北半の沖積平野部の小河川河岸に所在する。「短期逗留地」は既知の2件を、調査地南半の緩斜面台地で確認した。「城塞」は、沖積平野と山麓の丘陵部でいずれも未知の5件を記録した。新規で確認した「囲壁」4件は、いずれも山麓丘陵部に位置する。同地域で特徴的な「墳丘墓」は南の緩斜面に南北に営まれており、今回は2件を記録した。「土器散布地」はわずか1件であったが、比較的古維持期と思しき土器片を採集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目的としていた、踏査対象地域の確定と地域全体の地勢・考古遺跡の分布状況などについての情報を得られた。また、遺跡の新規発見を通じて対象地域内の文化的特徴の概要も把握することできたことから、当初の目的を十分に達成していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、調査対象地域の地勢にしたがって、精細な考古学踏査による新規遺跡の確認・記録を順次進めていく予定である。初年度調査時の問題点として、想定以上に考古遺物を表面採集できなかったことがある。このため、今後はキルギス側と協議の上、遺跡を毀損しない程度で、遺物回収を目的とした小規模試掘を新規登録遺跡において実施することも検討する。
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