研究課題/領域番号 |
18K12560
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
山藤 正敏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (20617469)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シルクロード / 天山北路 / セミレチエ / チュー渓谷 / キルギス共和国 / 考古学踏査 / 突厥 / ソグド人 |
研究実績の概要 |
本年度は、新型コロナウィルス感染症の度重なる感染拡大により、現地調査を実施できなかったため、一昨年度までに収集したデータの昨年度における整理・分析結果の一部を公表した。 また、今後の現地での調査方針を固めるために、衛星画像上で現存する遺跡の位置の把握に努めた。結果として、少なくとも100件程度の遺跡と思われる痕跡を調査対象地域内で確認したが、現地調査を実施できなかったため、現在までのところ、考古遺跡か否か、また、時期・種別について確定できていない。これらの痕跡は主に、調査地であるチュー渓谷西部のカラバルタ市周辺地域における西半に集中する傾向が見られた。特に、南の天山山脈山麓付近、とりわけ南西部には開墾されていない土地が一部残されており、この地域に30件程度の痕跡が集中していることが判った。これらの痕跡の多くは、衛星画像上で見る限り、2018・2019年度の調査で確認した小型周溝遺構に類するものと考えられる。昨年度の研究により、小型周溝遺構は突厥による追悼遺構の可能性が出てきているため、調査地における突厥の活動を考える上で重要な発見である。 上記に加えて、クルガン(墳丘墓)と思われる円形の痕跡が散発的に確認できた。これらの痕跡は、南の天山山脈南麓から北のカラバルタ市中心部周辺に至る緩斜面上に、東西に一定間隔をおいて、南北に連なっていることが多い。調査対象地域内で最大規模の13基のクルガン列(CV18019)は既に現地で記録済みであるが、これ以外にも数基程度から成るクルガン列は耕作地において現在もなお残されている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は昨年度に引き続き、新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う度重なる出入国制限措置により、予定していた現地調査を一切実施できなかった。このため、新たな遺跡データを得ることが叶わず、当該地域における考古学遺跡に関するデータの解析を進めることができなかった。代わりに、衛星画像上での遺跡と思しき痕跡の確認に努めたが、現地調査によらなければ遺跡の認定や各種データの取得はかなり難しい。こうした事情から、当初計画から遅延していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、我が国およびキルギス共和国における新型コロナウィルス感染症への対策や出入国に係る制限措置の動向を注視し、現地調査の実現可能性を引き続き模索する予定である。 現地調査が可能な場合には、これまでの遅延を取り戻すべく、衛星画像解析で判明した遺跡と思しき痕跡の集中地点(東部および南西部)に焦点を絞って、できるだけ多くの新規遺跡の確認・記録に努める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新型コロナウイルス感染症の度重なる拡大による渡航制限措置のため、キルギス共和国現地での調査や国内外学会への対面参加ができず、予算を執行できなかった。また、昨年度までのデータの整理・分析や衛星画像上での遺跡確認に際しては、昨年度までに購入した機材や無償のGISアプリケーション、オンライン上の衛星画像閲覧サーヴィスを利用できたため、追加で備品購入等を行う必要がほとんど生じなかった。このため、今年度予算の多くを次年度に使用することになった。この予算は、キルギス共和国での現地調査や最終報告書の出版に使用する予定である。
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