研究課題/領域番号 |
18K12561
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
佐藤 由似 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 専門職 (70789734)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ポスト・アンコール / 王都 / ロンヴェーク / 貿易 |
研究実績の概要 |
本研究はカンボジア中でも衰退の時代と考えられてきたアンコール王朝末期からポスト・アンコール期にかけての王都出土遺物の調査をもとに、当時の社会・経済・宗教的変容について検討を試みるものである。3年目にあたる本年度は、15~16世紀の王都スレイ・サントーの現地調査を昨年度に引き続き行う予定であったが、コロナ禍のため渡航することができなかった。15世紀から17世紀にカンボジアがどのように海外との貿易を進めていたのか、更なる理解を深めるために、日本・カンボジア間貿易を一事例として、文献調査ならびに現地調査をおこなった。 16世紀以降、カンボジア・日本間では南蛮貿易、朱印船貿易、唐船貿易など形を変えながら取引を続けていた。その中で注目したのが、漆である。日本は17世紀以降大量に漆をカンボジアから輸入していることが文献記録から判明している。実際、代表者のこれまでの調査によって、16世紀カンボジア王都であるロンヴェークの発掘調査より漆の付着した土器片が出土しており、今後詳細な調査を進める予定である。 本年度の研究においては当該期のカンボジアと日本間貿易の中心地の一つであった長崎での調査を進めた。17世紀にオランダ商館が設置された平戸、長崎、波佐見において出土遺物の調査をおこなった。中国陶磁に関しては、16-17世紀カンボジア王都と共通する種類の陶磁器が確認されたが、とりわけ東南アジア産陶器が注目に値する。タイ産褐釉陶器、土器、ベトナム産陶器に関しては、カンボジア出土資料と共通であるが、当該期カンボジア王都からはベトナム産陶器の出土量が日本と比べて少ない。今後、更なる調査が必要ではあるが、立地と交易ルートの違いを示唆しうるアイテムとして今後、丁寧な調査を進めていく予定である。なお、当該年度は本研究の最終年度であったが、コロナ禍のため次年度へと延長をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度はコロナ禍のため海外への渡航が叶わず、カンボジア現地での調査をおこなうことができなかった。そのため、本研究課題に必要な調査研究が遅れている現状である。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度が本研究の最終年度であったが、コロナ禍のため渡航できず予定していた調査研究を行うことができなかった。令和3年度に海外への渡航が可能になれば、カンボジアに赴き、現地調査をおこなう予定である。令和3年度末まで海外渡航が困難であると判断せざるを得ない場合も想定し、代替調査の内容を吟味しながら、文献調査を随時進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度中はコロナ禍のため海外渡航ができず、必要な調査を遂行することができなかった。そのため、次年度に繰越し、計画的に調査を進める予定である。
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