研究課題/領域番号 |
18K12564
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
佐々木 淑美 東京福祉大学, 留学生教育センター, 特任講師 (60637883)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 煉瓦造窯 / 保存 / 活用 / 塩類析出 / 保存環境 / 修復 |
研究実績の概要 |
初年度は、まず煉瓦造窯の保存状況を悉皆的に調査し現状を把握することを目的とし調査研究に取り組んだ。 初年度研究計画として提示していた愛知県常滑市に所在する煉瓦造窯2件での調査は十分に実施することができた。1件目のINAXライブミュージアムでの調査は、当科研以前より実施していたことから、保存環境データや壁面の劣化状態、析出塩類の種類と分布を把握できていたため、初年度調査ではその情報に基づき、保存環境の年次変化と壁面の劣化進行を詳細に考察することができた。また、前年末より実施中であった修復作業が完了したことで、その前後での保存環境の評価ならびに修復による壁面状態への影響の検討を進めている。特に塩類析出に対して実施された薬剤塗布については、その効果と今後の影響を検討する必要があることをINAXライブミュージアム担当者との打ち合わせで確認した。2件目は、レストランとして活用されている共栄窯で、空調による保存状態への影響と同型の窯であるINAXライブミュージアムの窯との比較を通して、活用方法とそのための保存方策を検討している。塩類の析出状況も保存環境もINAXライブミュージアムとは異なることを確認し、その要因を考察した。 また、比較調査として予定していたもののうち、埼玉県深谷市ホフマン煉瓦造窯と栃木県下野市ホフマン煉瓦造窯の基本調査も実施することができた。どちらも一般公開されている比較的保存状態の良好な大型の煉瓦造窯であり、これまでに保存修復措置も講じられてきた。そうした基礎情報と煉瓦造窯の保存・活用事例の収集を進めたことで、次年度に調査すべき煉瓦造窯を選定することができ、比較検討すべき項目もはっきりとした。 初年度に得られたこれらの調査成果に基づき、学会発表と論文投稿を準備中である。また、次年度以降の調査研究でも使用できる機材も購入することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
比較調査をより多数実施したいと考えていたが、2件にとどまった。 また、INAXライブミュージアムでの修復作業が予定以上に長期化したため、修復後の状態確認はこれからが本番となる。
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今後の研究の推進方策 |
比較調査を進め、対象とする煉瓦造窯ならびに煉瓦造建造物も随時追加していく。また、引き続きINAXライブミュージアムと共栄窯の調査を実施し、修復を伴う保存方策の検討と、煉瓦造窯の活用方策と保存方策の検討も進める。 次年度は煉瓦造窯の修復事例についても情報収集し、INAXライブミュージアムの修復評価に役立てたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
INAXライブミュージアムでの修復作業が長期化し、修復後に予定していた調査が3回程度できなくなった。また、勤務校での授業および他研究活動のため、予定していた比較調査も実施できなかった。これら調査費用の次年度繰り越しを希望する。 次年度は、繰り越し金をもとに初年度に実施できなかった比較調査を実施する。また、計画書に記載した他の比較対象の調査を実施するとともに、関連する煉瓦造建造物の選定と調査も実施する予定である。 さらに、初年度の成果を論文投稿する予定である。
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