研究課題
銅によるガラス・セラミックの赤色着色技術を「銅赤」と呼ぶ。本研究では,銅赤が利用された古代・中世のガラス製品について,蛍光X線分析を中心とした分光分析を非破壊的に用い,その起源,流通,製法の解明を目的とした分野横断的な研究を行った。主要な分析調査は2019年度までに完了したが,学会発表や論文投稿など研究成果公開のための時間として,2020年度まで研究期間を延長させていただいた。【2020年度の研究実績】 銅赤を含めた古代オリエントのガラス製品の研究成果について,複数の書籍・論文が出版された。また,複数の学会で研究成果に関する発表を行い,国際学会での発表も予定している。【研究期間全体を通じた成果】 本研究により,「銅赤」の技術的・物質的な変遷および伝搬について,その発祥の地である古代オリエントのみならず,日本を含めた広域を対象に,実態を明らかにすることができた。銅赤ガラスは前2千年紀中葉のメソポタミアと古代エジプトでほぼ同時に生み出されたものと考えられ,両地域ともCu2Oによる着色であったが,製法に違いが見られた。前1千年紀前半には古代エジプトでのガラス生産が下火となるが,メソポタミアでは銅赤ガラスの生産が継続されていた。紀元前後より東地中海沿岸を中心としていわゆるローマ・ガラスの生産・流通が始まると,その中で銅赤も多用され,Cu2O着色に変わる新しい銅赤技術である金属Cu着色もこの過程で生み出されたものと思われる。後1千年紀には,古代オリエント以外の地域(南・東南アジアなど)でも独自に銅赤ガラスの生産が行われるようになり,その製品は古代の調製半島や日本にも伝来した。2千年紀になると,比較的ローカルなスケールでも銅赤ガラスの生産・利用が可能になっていたものと目され,アンデス先史文明のものとされるガラス製ビーズの中にも,銅赤技術が利用されているものが検出された。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (3件)
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