研究課題/領域番号 |
18K12571
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上野 恵理子 東京大学, 総合研究博物館, 特任研究員 (70747146)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 解剖図 / 美術解剖学 / 教育用掛図 / 解剖学 / 医学 / 美術 / 描く |
研究実績の概要 |
2019年度は、本研究の基本資料体である東京大学医学部所蔵の新出解剖学教育用掛図の調査・修復・デジタル化を行った。掛図の計測・掛図の内容詳細、中度に傷んだ掛図の修復を行い、専門業者によるデジタル化を行った。掛図の修復についての調査は、重度に傷んでいる掛図の修復・保存方法である。それについて、保存修復師による修復方法の調査を行った。 解剖学教育用掛図の調査においては、海外における医学・美術解剖学図の調査を中心に行った。イタリア「ボローニャ大学:解剖学ムラージュ博物館」、フランス「リヨン第一大学:医学史薬学史博物館」、「パリ大学間医学図書館」、「パリ高等美術学校」における医学・美術解剖学の手描きを中心に解剖図のオリジナル資料調査を行い、伊・仏における解剖図の調査・研究をした。出版物の紙面やオンライン上のデジタル画面で観察する図とは違い、オリジナル資料の紙質や筆記具による描写や表現が細部にわたって観察ができ、美術解剖学と医学教育が交差する各資料体のヒトが身体を描く際の線の使い方・表現方法について考察できた。これがさらに本研究の目的である身体表現の「平面性」の変遷を追う材料となり、現代の身体表現の様式が確立された経緯を推察することが可能となった。 解剖学教育用掛図および医学・美術解剖学資料の調査を継続して行い、近代から現代にかけて身体の表現における「平面性」がいかに変遷したかを検証した。特に図像の輪郭に注目し、線描の使い方や表現方法で立体的な身体がいかに二次元化されたか、分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基本資料体である東京大学医学部所蔵の新出解剖学教育用掛図の調査・修復・デジタル化、そして、比較対象となる掛図を所蔵する 海外の研究機関における資料調査は予定通り進んでいる。 4月から9月にかけて、基本資料体である解剖学教育用掛図の調査(計測・描画内容詳細)を行い、簡易的な修復を行った上で専門業者でのデジタル化を95本行えた。これにより、掛図全696点のデータを拡充でき、データベース化に向けての準備を進めることができた。修復についての調査は、重度に傷んでいる掛図の修復・保存方法である。紙・軸装の掛図全体の修復について、保存修復師による修復方法を調査でき、今後の保存・修復についての方向性が得られた。 10月には、本資料体と比較対象とする医学・美術解剖図の資料を収蔵している「ボローニャ大学:解剖学ムラージュ博物館」(18点)「リヨン第一大学:医学史薬学史博物館」(37点)、「パリ大学間医学図書館」(32点)、および「パリ高等美術学校」(20点)においてそれぞれ調査し、同時代(それ以外も含む)伊・仏における解剖学掛図の様式を系統的に分析できた。 2020年1月から2月にかけて、海外の各研究機関のコレクションと本研究の基本資料体である東京大学医学部所蔵の新出解剖学教育用掛図との比較調査・分析を行うことができた。付随して、各調査先の保存方法、資料の扱い方、アーカイブ公開のページ構築・充実化についても調査することができ、今後の資料体の保存・活用・公開に向けての参考になるデータが得られた。また、各研究機関が行う発行物や展示・イベントについても調査することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度では、目録およびデータベースを所属する大学博物館のウェブページで一般公開するデータベースの構築に向けて引き続き準備を進める。平行して本資料体の特別展示の開催に向けての資料調査を進める。重度に傷んでいる掛図の修復方法は、保存修復師による修復では本格的な修復方法になり予算的に必要最小限の修復方法を見出す必要がある。したがって、2020年度に重度に傷んでいる掛図をデジタル化する予定であったが、研究期間内にデジタル化するためには軽度・中度の掛図から選ぶことになる。所属する大学博物館にて研究協力者を集め美術史学・医学教育史・文化財保存・博物館学の各観点から本資料体を再評価するシンポジウムを開く予定でいたが、コロナウィルスの感染回避のため在宅勤務を行いながらの研究になるため現状で企画できるかどうか言及できない。他の方法で何ができるか模索し、予定していた研究内容を可能な範囲で進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費が抑えられたため生じた。翌年度、消耗品に当てる予定。
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