研究課題/領域番号 |
18K12577
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研究機関 | 国立研究開発法人土木研究所 |
研究代表者 |
南雲 直子 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(水災害・リスクマネジメント国際センター), 研究員 (00599665)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 土砂輸送 / 河床材料 / 粒度分布 / 川幅 / 水位変化 / 流量変化 |
研究実績の概要 |
トンレサップ湖に注ぐセン川の最下流部に着目し、衛星写真や空中写真、地形図を利用した地形判読、前年度までに取得した河床材料の粒度分布データや河川地形の測量データをもとに、モンスーン性の降雨がもたらす河川水位・流量および湖水位の季節変動が、セン川の河道形状や土砂輸送に及ぼす影響について検討した。セン川の下流域では、河道幅は上流側よりも下流側よりも狭く、その変化の傾向から大きく3つの区間に区分されることが確認された。これらは、セン川の雨季の最大流量だけでなく、雨季の終わりから乾季の初め頃におけるセン川流量の減少や湖水位の低下や、雨季の終わりから乾季の初め頃のセン川流量に対応するように形成されている可能性が明らかとなった。河床材料は主に砂からなり上流側から下流側に向かって細粒化しており、河岸上部にはウォッシュロードが堆積する場所もあることが分かった。また、浮遊砂が卓越するセン川の流砂と河床材料の縦断分級について、河川水位・流量および湖水位の季節変動を考慮した再現計算法を土砂水理学的視点で検討し、試算を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外渡航が難しい社会情勢となったため、当初計画していた現地調査の見通しが全く立たなくなった。また、研究成果発表を予定していた国際学術会議が延期となった。一方で、先行研究事例やこれまでに取得したデータを見直しながら地形や土砂輸送に関する分析を予想以上に進めることができ、土砂輸送に関する試算まで行えた点は大きな一歩である。また、セン川の事例と比較するために、同じく河川水位・流量のみならず河口域の水文環境が周期的に変化するシッタン川の地形や河床材料について検討できた点は、本研究課題における考察や取りまとめを進める上で大いに役立つものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
海外への渡航は今後しばらくの間は難しいと予想されることから、これまでに取得したデータの分析や、地形図や衛星写真、GISを用いた解析、といった現地調査以外の手法によって研究を進めていくことが必要となる。今後は、既に試料採取や分析を行っているスタウン川のデータについて詳細な解析を進め、セン川における検討結果と統合して、湖水位及び流入支川の水位・流量の変化が土砂輸送及び地形へもたらす影響をまとめ、各支川がトンレサップ湖岸の地形発達における各支川の役割を明らかにしたい。同時に、各支川の流砂および河床材料の分級を評価するための再現計算にも引き続き挑戦したい。また、セン川と同様に河川水位・流量の変化のみならず河口域の水位も周期的に変化するような河川、例えば、河口の潮位差が大きい日本国内の河川を抽出して分析を進め、トンレサップ湖岸域と比較することも検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外渡航が難しい社会情勢となり、当初計画していたカンボジア現地調査が中止になったり国際学会の開催が延期になったりしてため、次年度使用額が生じた。今後は、学会参加の参加旅費や国際学会への投稿料、論文の英文校閲料として使用することを計画している。また、日本国内の河川を対象にこれまでと同様の分析を進め、その成果を対比しながら研究を取りまとめていくことを計画しており、その調査旅費等に使用する予定である。
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