研究課題/領域番号 |
18K12577
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研究機関 | 国立研究開発法人土木研究所 |
研究代表者 |
南雲 直子 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(水災害・リスクマネジメント国際センター), 研究員 (00599665)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 土砂輸送 / 地形発達 / 周期変化 / 水位 / 洪水履歴 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き海外渡航が難しい社会情勢にあり、当初計画していたカンボジアでの現地調査を行うことができなかった。そこで、トンレサップ水系の河川と同様に河口域の水位変化が大きく、土砂輸送が活発な熊本県白川流域を新たに選定し、河床材料の採取と粒度分析および密度分析を行って、下流域の土砂輸送および地形発達過程について検討した。また、空中写真や治水地形分類図による河川地形の解析、昭和28年洪水時の熊本市中心部の水位および土砂堆積深の分析を行い、熊本市中心部の土砂・洪水氾濫特性を検討した。白川の中・下流域の河床材料は分級しながら輸送されていること、大規模な洪水時には熊本市中心部付近で特に細粒な活発に氾濫し、扇状地をはじめとする微地形を発達させていることが分かった。また、白川沿いの氾濫リスクは右岸よりも左岸で高いことが明らかとなった。そして、さらに下流まで到達した土砂は、活発な潮汐の作用を受けながら河口干潟の形成に貢献していることが示唆された。これらの成果の一部は住民向けの防災ワークショップで発表した。また、トンレサップ湖岸域における前年度までの検討結果は第34回国際地理学会で発表し、これに関して他の研究者らと意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外渡航が難しい社会情勢となったために予定していたカンボジアでの現地調査が行えず、当初計画を大きく変更せざるを得なかった。しかしながら、これまでの分析結果をまとめ、国内学会および国際学会で発表することができた点は評価できる。また、国内においてトンレサップ湖岸域と対比可能な白川を新たに選定して現地調査を行い、土砂輸送や地形発達について分析を進めることができた点は、本研究課題をまとめる上で大いに助けとなるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで諦めざるを得なかったトンレサップ湖岸域の現地調査の実施を引き続き検討したい。また、新たに選定した白川においては、大きな潮差がもたらす河口の周期的な水位変化が土砂輸送や流路の形成に及ぼす影響について、さらに詳細な検討が必要であると考えている。この分析に引き続き挑戦し、これまでに取りまとめたトンレサップ湖岸域の事例と比較しながら、河川下流域の地形発達に河口の水位変動が及ぼす影響について取りまとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外渡航が難しい社会情勢となり、当初計画していたカンボジアでの現地調査が中止になったため、次年度使用額が生じた。残額は、論文投稿や学会発表の費用として使用予定である。また、カンボジアでの現地調査も引き続き検討しており、その調査旅費等に充てたい。
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