2022年半ばより新型コロナウイルスの感染状況が世界的に改善したことを受け、2023年3月に現地調査を実施することができた。この調査では、セン川下流域における河床材料の縦断分級を詳しく調べることを目的に、河床材料の採取・分析と流路内部で見られる微地形の測量を行った。流路沿いの道路状況は従来よりも格段に向上したため、過去の調査では到達することのできなかった地点においてもデータを収集することができ、河床材料が砂礫から砂へと縦断方向に変化していく様子や、河口近くでさらに分級が進む様子を確認した。現在、得られたデータの分析を進めているところである。この調査では、建築資材として販売することを目的とした河床材料の採取や、乾季米の栽培を目的としたポンプ揚水が各所で行われていることを確認した。このように積極的な河川利用はこれまでにはなかったことであり、カンボジア国内の経済成長に伴って、地域とセン川との関係が変化しつつあることが示唆された。同調査においては、7世紀頃の都市遺跡があるセン川支流の踏査も行い、考古学や建築学、古環境学など、関連分野の研究者らと古代の水利用や流路改変等にかかわる議論も行うことができた。 現地調査は乾季に河川水位がよく下がった状態で行う必要があるため、今回は年度末に実施せざるを得なかった。そのため、この調査で得られた成果を発表することは叶わなかったが、それ以前の検討結果を取りまとめ、国際学会等で発表することができた。
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