研究課題/領域番号 |
18K12580
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
久保 倫子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (00706947)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 都市空間の空虚化 / 都市衰退 / 分断都市 / 都心開発 / 郊外の衰退 / グローバリゼーション |
研究実績の概要 |
本年度は、先行研究の整理と本研究の枠組みの構築を行い、国際学会で理論面および日本での研究事例の報告を行った(SASE大会、国際社会学会トロント大会、国際地理学連合地域大会、同都市地理学コミッション大会等)ほか、論文等にその成果を掲載した。また、国際社会学会のハウジング・建造環境研究コミティーのメンバーや、縮退都市論に取り組む各国の研究者との議論や意見交換を行った。国内外で研究関心が近い研究者とのネットワークを構築することができ、2年目以降の現地調査や国際学会等での共同セッション運営、共同研究に向け、具体的に議論できた。 さらに、シカゴ(イリノイ大学シカゴ校を拠点としている)において現地調査を開始し、文献精読、資料収集、現地の権威との議論を進めた。これまでの大量生産・消費、外延的拡大を前提とした都市における空虚な空間(荒廃した場)は、21世紀の新たな都市段階においてはジェントリフィケーションを通じて再発展してきた。都市空間の再編が進む中で、都市の内部構造が変化し、プロジェクトや都市ガバナンスの重要性が増してきたことを受け、これらを検証する都市研究の成果が蓄積されており、研究蓄積を踏まえて本研究の理論的枠組みを構築している。 先進国都市(特に日本や北米)では、グローバル化に伴う都市分断、格差拡大などの影響を受け、新たな空虚な空間が拡大しつつある。1年目は、こうした一連の変化を理論的に説明することを大きな目的とし、都市空間の空虚化の実態を視察した。1年目に実施した研究枠組みの構築や理論面の整理、研究ネットワーク構築、予備調査を基礎として、2年目以降は、北米都市における現地調査を本格化させるとともに、途中経過を国際学会や国際誌に公表していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的通り、理論面の整理、研究枠組みの構築、北米都市での予備調査を実施した。先行研究の整理と現地権威との議論を通じて、「都市空間の空虚化」をどのようにとらえて研究を遂行していくかを考察してきた。この研究枠組みにある個別の現象(都心部の再発展、郊外の衰退や高齢化、空き家・空地の増加、都市圏内の分断)について、日本都市の実態を整理して国際学会等で発表したほか、予備調査を行っているシカゴにおいては都市研究や都市政策の歴史を学ぶとともに、多様なネイバーフッドを巡り都市空間の空虚化が進む様子を観察した。予備調査では、イリノイ大学シカゴ校の教員との議論を通じて、シカゴおよびアメリカ都市の実態を日本との違いに注目して整理し、理論化を目指している。概ね、当初の予定通りに研究が進行しており、これを踏まえて2年目には北米都市での現地調査を本格化する。
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今後の研究の推進方策 |
2年目以降は、日本都市および北米都市(シカゴ、トロント、アメリカ西海岸都市等)での現地調査を本格化し、その成果を国際誌にて公表していく予定である。シカゴでは、都市圏内での格差拡大や都市分断の実態を把握するとともに、社会的・領域的公正性やEquityなどの概念を取り入れた政策(総合計画、住宅政策、都市政策等)の実態、様々な主体による諸問題解決に向けた取り組み、コミュニティによる取り組みなどを収集し、それらの相互関係に着目して整理していく予定である。同様に、他都市においても調査を行い、日本都市に応用するための比較研究や現地権威との議論を進めていく予定である。
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