研究課題
本研究は,日本の都市で拡大する空間の空虚化にともなう居住環境の不平等という喫緊の課題を解決に導くことを目的に,以下の調査を行った。1)都市での居住環境の不平等拡大について,権威との議論等によりその実態を整理する。2)Equity(公正)の概念を取り入れた都市計画策定の過程に研究者が参加し,本課題に取り組むシカゴについて,現地調査により実態と問題点を分析する。3)以上を踏まえ,日本の都市に応用可能な仕組みを導くとともに,都市内部における居住環境の不平等拡大に関する理論を構築する。【成果】都市空間の空虚化や居住環境の不平等拡大の実態を明らかにするため,イリノイ大学シカゴ校に2018年10月~2019年9月まで滞在し,現地調査を行った。また,そこでの権威らや現地関係者へのインタビューをふ踏まえ,東京大都市圏における実態について,理論化を行った。グローバリゼーションの進展にともなう都市政策や都市開発手法の変化により,多くの都市が不平等の拡大を経験し,さらに交通結節点に諸機能が集積する都市構造への変化を遂げた。シカゴでは,社会経済階層による分断が進み,社会的公正性の観点を重視した総合的都市計画が策定された。交通環境の改善と健康問題の解決により,誰もが居住地による不利益を被らない都市圏づくりが進められていた。一方,東京大都市圏においては,高齢化の進展と居住環境上の不平等が拡大し,発展する都心部と衰退する外部郊外の差異が2000年以降顕著となっていった。外部郊外では,空き家増加や高齢化にともなうサービスの低下が顕著となるなか,高齢者の孤立を防ぎ,自立した生活を維持できるよう,行政・福祉関係団体・住民組織が働く事例が目立った。しかし,こうした対症療法的な対策では,本問題の解決は難しく,制度面の改変や家・家族・福祉の相互関係の変化を踏まえたサービス供給など,根本的な解決が求められる。
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