研究課題/領域番号 |
18K12583
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
庄子 元 岩手大学, 教育学部, 准教授 (90774696)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 農地利用 / 地域営農組織 / ガバナンス / 水田経営 |
研究実績の概要 |
2021年度は主に青森県津軽平野における農地利用のガバナンスについて調査を実施した。当該地域では大規模な個別農家による水田経営が卓越している。事例地域としたつがる市は日本の縁辺地域という性格から、高度経済成長期以降における農村への工場進出が少なかった。そのため、当該地域における農家は長く出稼ぎ労働を続け、縁辺地域でありながら、大都市の日雇い労働市場の水準で賃金を得ていた。在宅兼業の機会が、研究代表者が昨年度までに調査を実施した地域営農組織が中心となって農地を利用する地域に比べて乏しかったことで、当該地域の農家は個々に水田経営を拡大させていった。水田経営を拡大させる際、資金面で重要となったのは出稼ぎ労働による収入であり、特に複数の男性世帯員が出稼ぎ労働を行っていた農家で水田の規模拡大は顕著であった。また、当該地域においても農地貸借や農作業受委託には地域内農家の社会的な紐帯が利用されていたが、水田経営の規模拡大を図った時期によってその後の農地利用の形態が異なることが明らかとなった。 上述した研究成果は、近年全国的に取り組みが盛んとなっているブランド米の動向を研究視点に加え、2021年5月15日にオンライン開催された東北地理学会春季学術大会で「稲作経営の規模拡大下におけるブランド米産地の形成」として報告を行った。さらに、当該報告を「稲作経営の規模拡大下における農家の品種選択」というタイトルに修正し、岩手大学文化論叢(No.11、2022年3月17日)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では佐賀平野における農地利用ガバナンスについて調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大によって調査の実施が困難となった。そのため、同じ地方であることから佐賀平野と比較して調査実施のハードルが低い青森県津軽平野を新たな調査地域と設定し、研究を進めてきた。 2021年度に津軽平野での調査結果を学会で報告し、その内容は学内雑誌に掲載されたため、事例地域の変更はあったものの、本研究課題全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は大きく二つの方向性に整理できる。 一つ目は2021年度に実施した津軽平野での調査結果を学術誌に投稿することである。現在は投稿準備を進めている段階にあり、掲載までのプロセスのなかで追加調査や英文校正などが必要となる可能性がある。 二つ目は地域外人材を含めた農地利用ガバナンスの再編である。2021年度までの調査では、集落内または複数集落から構成される地区内の農業者や居住者に焦点を当てて、農地利用ガバナンスの再編を検討してきた。しかし、現在ではUターンやIターンを行った人材も農地利用の重要な担い手となっている。これら地域外人材を含めて、どのような農地利用ガバナンスが成立しているのかについて、その先進地域である青森県南部町と秋田県東成瀬村で調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、予定をしていた佐賀平野における農地利用ガバナンスの調査を実施することができなかった。佐賀平野に代わって津軽平野で調査を実施したが、近距離にあるため旅費の使用額が小さくなった。 次年度では、未使用額を使用し、津軽平野における追加調査を実施するほか、新たに青森県南部町と秋田県東成瀬村での調査を実施する。
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