研究課題/領域番号 |
18K12584
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
中西 雄二 東海大学, 文学部, 講師 (10614654)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 都市マイノリティ / 同郷団体 / 鉱工業都市 / ポスト産業社会 |
研究実績の概要 |
本研究課題では日本国内の鉱工業都市へ労働力として移入し、定着してきた国民国家の周縁地域からの都市移住者を対象とし、ポスト産業社会において、いかに彼らが都市マイノリティ層としての同郷者コミュニティや人的ネットワークの構築や変容を経験してきたのか、文化・社会地理学的な視点での分析を行なうことを研究目的として設定している。3年計画の2年目にあたる平成31・令和元年度においては、当初の計画に基づき昨年度に引き続いて(1)理論的枠組の整理と(2)フィールド調査の実践を行った。 (1)理論的枠組の整理に関しては、人文地理学をはじめとする人文・社会科学の分野における移住者コミュニティやアイデンティフィケーションに関する論考、現代社会や都市に関する理論的論考などの書籍、さらには調査対象の沖縄・奄美出身者に関連する書籍や資料を購入し、その精読と分析を行った。 (2)フィールド調査の実践に関しては、主に神戸市や東京都にて開催された奄美出身者の同郷団体主催の行事等において参与観察や聞き取り調査を実施した。具体的には、神戸市では神戸奄美会や神戸亀津会が催した定期総会や運動会への参与観察、さらに神戸奄美会館での聞き取り調査、東京都では東京与論会による定期総会などへの参与観察や聞き取り調査などを行った。 また、上記に加えて、神戸市立図書館、鹿児島県和泊町立図書館、鹿児島県与論町立図書館、大阪市立図書館などでの同郷団体や人口移動に関する行政資料や郷土資料の継続的な渉猟も行った。 なお、以上の調査で得られた研究成果の一部は、学会にて研究発表したほか、学会誌掲載論文1編にまとめて公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成31・令和元年度においては、複数回にわたり、神戸市、東京都、鹿児島県奄美群島をはじめとする調査対象地でのフィールド調査と文献調査を進めた。特に、神戸市を中心に活動する神戸奄美会を対象とした調査と、鹿児島県の与論島と沖永良部島で行なった文献調査から鰓得た成果をもとに、学会発表1編、学会誌掲載論文1編として公表することができた。その他、大牟田・荒尾地区与論会や東京与論会などの奄美出身者の同郷団体を中心に、聞き取り調査を進めるとともに様々な情報交換の協力を得られたことで、昨年度の成果を基礎にさらなる継続的な調査に向けた資料やデータを得ることができた。 研究全体の理論的枠組の検討についても、最新の人文地理学や隣接分野に関する都市内部のコミュニティや都市空間編成に関する文献の入手のほか、さらなる統計資料などの文献も集約的に入手することができた。 このように、研究成果の点ではおおむね順調に進展しているものの、年度末に予定していた鹿児島県奄美群島への文献調査と聞き取り調査等に関して、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により急遽取り止めることとなったことから調査計画の一部を実施することができず、その点に関しては当初の計画よりも研究の進捗はやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる令和2年度は、調査の継続とともに研究の整理・総括と公開を行なう。そのため、従前の(A)九州北部の旧産炭地域、(B)阪神工業地帯、(C)京浜工業地帯へのフィールド調査や鹿児島県などでの文献調査を継続して進めつつ、同時に資料の整理や諸事例の分析作業に随時移行をしていく。そして、本研究の主題である同郷者集団のネットワークやコミュニティの変容過程を通時的に解明するとともに、共時的な新たな動きへの将来的な展望を考察する。また、研究対象に対して空間概念や移動論的な視点も援用しつつ、時系列的な側面を考慮しながら、将来的な他の移民研究や都市形成史研究との比較検討の可能性を探る。 なお、これらの研究成果は初年度からの期間を通して、人文地理学会や日本地理学会など国内外での学会発表や、学術誌への投稿を念頭に置く。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた文献調査や聞き取り調査が、新型コロナウイルス感染拡大の影響よって取りやめとなったことに伴い、その額に相当する次年度使用額が生じた。 次年度は、主にフィールド調査・文献調査に関わる旅費、及び人文地理学関連書籍や研究対象に関する文献などの購入費に充てる予定である。
|