研究課題/領域番号 |
18K12585
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
國府 久郎 早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (50762374)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フランス / 都市化 / 都市公共交通 / マルセイユ / パリ / リヨン / 路面電車 / 1870年代から1930年代 |
研究実績の概要 |
本研究は、フランス三大都市(パリ・リヨン・マルセイユ)における都市公共交通の整備と都市化の関連性を検討する。日本の歴史地理学の研究動向とは異な り、フランスでは都市化における重要性にもかかわらず、都市公共交通に関する本格的な歴史研究は少ない。マルセイユの研究を行ってきた申請者は、その研究成果をもとに、三大都市の歴史における都市公共交通の社会的意義を比較検証する。大部分の住民が自家用車を所有していなかった1870年代から1930年代までを 考察することで、都市公共交通の本来の役割を浮き彫りにするのが本研究の目的である。研究方法としては、歴史地理学と人口学の研究を基礎としながら、都市 政策史や経営史、社会史の方法を援用し、総合的に都市化の過程と公共交通網拡大の関連性を分析する。そして、現代に関する都市地理学における比較研究の基 盤を作るものである。 本年度はパリ国立史料館(Archives nationales - Site de Pierrefitte-sur-Seine)およびパリ史料館(Archives de Paris)で史料調査を夏期休暇中に実施した。パリ郊外においても19世紀末より路面電車への需要が高まり、郊外からの「乗入れ電車」が次々と建設された状況を多くの計画地図から確認できた。また、路面電車の路線の建設に対する請願書が相当多数の郊外住民より出されているのも把握できた。マルセイユではカルティエ(街区)レベルで住民組織が形成されていたが、パリ郊外の住民たちはコミューン(市町村)の首長に委ねて、このような請願書をセーヌ県などに提出する傾向にあったようである。今回の調査ではマルセイユやリヨンで見受けられた、複数の街区が連盟を結成するまでに至る郊外住民の組織化はパリでは確認できなかった。この点については、今後さらに調査を進める必要があるであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は渡仏前にパ リ市・パリ都市圏関連図書の収集を行い、同時に、複数あるパリの史料館のインターネットサイトで、事前に史料の所在調査を実施したため、現地で効率的に史料調査を実施できた。これらの研究成果は、今年度はマルセイユとの比較対象として分析し、口頭発表や論文投稿を行った。パリ都市圏のみの都市公共交通史については、研究文献が膨大にあり、同時に史料分析を進めているところであるので、今後その研究成果を発表していく予定である。 また本年度の研究成果として、現在、Histoire, economie et societe誌に、Tramway deux sous ; naissance d'une politique du transport public urbain : une tentative du premier maire socialiste de Marseille, Simeon Flaissieres (1892-1902)を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はリヨン市を研究対象とする。夏期休暇中に現地で史料調査を実施する予定であったが、コロナウィルスの影響で渡仏は現時点では難しそうであるので、フランスの古書店から文献をできるだけ購入し、リヨンの都市化と都市公共交通の発展史の特徴を把握する。詳細な分析は不可能であるが、今後の現地調査を速やかに行えるように準備を整えておきたい。また、3年の研究期間の成果として、フランス語の書籍を執筆する。マルセイユの都市化の歴史が中心となるが、昨年のパリの現地調査で得られた分析結果と、本年度のリヨンの研究動向も書籍には反映させる。あわせて歴史地理学会等で、三大都市の比較分析に関する報告を行い、論文にまとめる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は物価の高いパリでの現地調査を実施し、念のため多めに予算を事前に配分していた。差額はリヨンの分析に使用する。
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