日本の歴史地理学の研究動向とは異なり、フランスでは都市化における重要性にもかかわらず、都市公共交通に関する本格的な歴史研究は少ない。本研究では三大都市における地理的条件と人口動態の相関関係を分析したうえで、市長や市議会による都市公共交通政策や、私企業による建設・運営状況、住民の組織化、さらに個人・家族の居住・職業形態の変化への影響を可能な限り考察した。以上の研究成果は、日本の歴史地理学・都市地理学における比較研究の基盤となる。さらに、自家用車が普及していなかった時代における都市公共交通の歴史の考察により、現在、数多くの問題を抱えた日本の都市公共交通を見直すきっかけとなることも期待される。
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