研究課題/領域番号 |
18K12586
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
飯塚 隆藤 愛知大学, 地域政策学部, 准教授 (10516397)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水陸交通 / 歴史GIS / 地理学 / 近代 / 東海地方 / 豊川 / 天竜川 / 矢作川 |
研究実績の概要 |
本研究では,東海地方の中でも主要な5流域(木曽三川・天竜川・豊川・矢作川・富士川)を調査対象に,水陸交通に関する歴史GISデータベースを構築し,時空間分析をすることを目的としている。科研費(研究活動スタート支援)で取り組んだ「淀川流域」と「利根川流域」と同様の手法を用いて,将来的に東海地方の5流域を含めた比較研究を行うことを予定している。平成30年度は研究計画に基づき,主に以下の2つを実施した。 1.東海地方5流域の範囲を網羅する旧版地形図を入手し(明治期から順次作業),愛知大学で所有する大型スキャナーを利用して,TIF形式でデジタルデータ化した。その後,GISソフトウェアを用いて,TIF形式の画像に緯度経度座標の付与などの幾何補正を行い,GISデータ化(ラスター形式)した。そして,豊川流域・天竜川流域・矢作川において,旧版地形図をもとに,河川や道路,街道,鉄道などの水陸交通にかかわるGISデータ(ベクター形式)を構築した。 2.東海地方5流域に関する絵図,古文書,古記録,古写真,絵葉書,自治体の編纂資料等を購入し,絵図や古写真,絵葉書についてはスキャナーを利用して,デジタル化した。天竜川流域では,明治期から昭和初期までの舟運に関する古文書・古記録を入手できたため,これまで構築した水陸交通に関する歴史GISデータと重ね合わせ(オーバーレイ)ができるように,歴史的な地理情報についてExcelを用いてデータ化した。また,明治中期における船舶定繋地のGISデータ化については,『徴発物件一覧表 明治23年版』を用いるなど,統計書に記載された情報も順次GISデータベース化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように,平成30年度は東海地方における水陸交通の歴史GISデータベースの構築に向けて,最も基盤となる旧版地形図データのGIS化と,入手した資料のデータ化の作業を実施した。前者の成果として,「三遠南信地域における歴史GISデータベースの構築」(『越境地域政策研究論集』2019年3月)に掲載した。後者については古文書・古記録の解読を含むもので,データ化・整理に膨大な時間を費やした関係で,当初予定していた現地でのフィールドワークが実施できなかった。しかしながら,現地調査を行うためには,収集した地図・資料をもとにした歴史GISデータベースの分析が必要不可欠であることから,結果として「おおむね順調に進展しているもの」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は,構築した歴史GISデータベースをもとに,フィールドワークを実施し,得られた知見や現地で収集した統計・資料等をGISデータ化し,更新作業を進める。また,平成30年度に構築途中であった木曽三川流域と富士川流域についても,GISデータ化に取り組み,当初の研究計画通り,令和2年度には,得られた分析結果を総合して,本研究の最終的な目的である,東海地方の主要5流域における近代水陸交通の地域的変化を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
「7.現在までの進捗状況」で記載したように,平成30年度は当初予定していた現地でのフィールドワークが実施できなかったこと,またその分,絵図や古文書などの資料の「物品費」の購入に大幅な執行をした関係で次年度使用額が生じた。
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