本研究の目的は、内戦終結以降のカンボジア農村開発をめぐる国家・NGO・農民の関係性を人類学的調査によって明らかにするとともに、三者関係を捉えるための新たな理論的モデルを提示することである。 具体的な課題としては、次の3点が挙げられる。(1)グローバルな開発アジェンダとカンボジア国内における農村開発、(2)国境を越えた紡がれるグローバルな農民のネットワークと連帯、(3)国家・NGO・農民関係の理論的研究である。 以上の目的を達成し、課題を明らかにするために、2021年度は(1)経済人類学、政治人類学、ポスト開発研究に関する文献研究の実施、(2)前年度に実施した予備調査のデータの整理と検討ならびにオンラインでのインタビュー調査と文献資料収集の実施、(3)国際学会での口頭発表といった計画を立て研究を遂行した。現地調査については、COVID-19感染拡大の影響により実施が困難であったため、ICTツールを使った調査に切り替え、資料収集ならびにインタビュー調査を実施した。インタビュー調査では、これまでフィールドワークを継続し関係を構築してきたタカエウ州の2つの集落の農民組合組織メンバーと首都プノンペンの農民連合メンバー、NGOスタッフ、農水省役人にオンラインで話を聞くことができた。 また、これまでの調査結果と今年度新たに得られたデータをもとに、国際会議(The Society for Applied Anthropology)にて口頭発表を行い、幅広い地域の研究者からコメントをいただくことができた。
|