研究課題/領域番号 |
18K12592
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
松波 康男 東京外国語大学, 現代アフリカ地域研究センター, 研究員 (90811125)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 聖者信仰 / 土地収奪 / 民族間対立 / ベニシャングル・グムズ州 / オロモ / エチオピア |
研究実績の概要 |
本研究課題における本年度の研究実績の1つは、2019年12月18日から2020年1月6日までエチオピアで実施した現地調査である。この調査では、同国西部のベニシャングル・グムズ州の農村社会に暮らす人々の社会・宗教生活について、世帯調査を行うことで把握しようと試みた。 また、2000年代後半、エチオピアはアフリカ屈指の経済成長を遂げたが、この間、農村部では、国内外の資本による大規模な土地収奪と農業開発が急速に進んだ。これを踏まえ、本調査では、同州の農村社会における土地収奪がどのような仕方で実施されたか、そして、それが人々の生活にどのような影響を及ぼしたかについて併せて調査した。また、エチオピアで近年激化している民族間対立の影響についても調査した。 調査地では経済活動を巡ってコミュニティの成員同士の関係性が複雑化しており、同時に、そこに見られる異なる民族帰属をもつ人々の関係性も緊張化していた。行政村長や、企業家らへのインタビューからは、土地収奪や農業開発が、集落内の就労形態や人々の関係性を変更させる契機となったことが分かった。このような社会状況で、当地で定期的に実施されている宗教集会が、コミュニティの成員同士のみならず、民族的他者同士のコミュニケーションのチャンネルとなっていることがこの調査で明らかとなった。 二つ目は、アフリカ内外の精霊信仰に関するワークショップでオロモの人々の信仰に関する研究報告を英語で発表したことである(2020年1月23日)。エチオピア・アルシ地方に見られる憑依現象について報告し、学術領域を超えて、さまざまな人文系研究者らから建設的なコメントを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、エチオピア西部で実施される宗教儀礼等について、参与観察を通じて理解を深めることができた。この調査で得られたデータは、エチオピアを含むアフリカ各国で生じた経済発展が、地方の農村社会に暮らす人々の宗教生活にどのような影響を与えたか理解するための基礎的な資料になる点で重要である。 また、同国の精霊信仰に関する口頭発表(表題「「Healing Ritual or Cause of Suffering: Spirit Possession in Rural Ethiopia」)を、国際的なワークショップ「TUFS special seminar Contemporary Spirit(ual): Cults Revival or Continuity? -An Interdisciplinary Workshop-」で行い、さまざまな学術分野の研究者から建設的なコメントを得ることができた。以上のことから、本研究課題は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題について、令和2年度及び3年度では、当初の計画どおり、これまでの研究成果の発表機会を積極的につくる。とくに令和2年度には、現下、世界規模での新型コロナ・ウィルス拡大の影響から、当面は国外での調査、発表の機会を得ることは困難であると推察されるため、国内、とくに都内、学内などといった身近なところで発表の機会を得るように努める必要がある。 令和3年度は、本研究課題の最終年度となるため、集大成としての成果発表を行い、また、現地社会への研究成果のフィードバックを計画している。他方で、上述した新型コロナ・ウィルス感染拡大の影響が長期化することも考えられるため、渡航に際しては状況を適切に判断し慎重な判断を行う必要がある。渡航が不可能と判断される場合には、現地へのフィードバックは先送りにし、国内で成果発表の機会を得るようにする。
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