研究課題/領域番号 |
18K12593
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
浅井 優一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80726860)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フィジー / 環境運動 / キリスト教 / 自然と文化 / 儀礼 |
研究実績の概要 |
本研究は、フィジー諸島にある南太平洋大学(Institute of Applied Science; IAS)が、ダワサム地域において実施しているフィジー沿岸資源管理(FLMMA)活動に着目し、当該活動の導入を地域住民が決意した背景に、ペンテコステ系キリスト教団体(Covenant Evangelical Church of Fiji)が、民家から種々のフィジー土着の伝統儀礼用具を回収し焼き尽くした後、そこに十字架を立てる「土地浄化儀礼(Healing the land process)」を実行した出来事が存在することを明らかにするものである。本年度は、土地浄化儀礼によって破壊されたとされる地域の儀礼的秩序を再形成する鋳型として、環境運動が受容・実施された過程を明らかにするため、インタビューデータの分析を行った。フィジーにおける多くのコミュニティにとって、環境運動とは社会や文化、歴史といった特定のコンテクストに根ざして受容・実践される活動としての性格が顕著である。そのため特定のコミュニティにとって「効果的」な環境運動を推進するためには、当該コミュニティの文化的コスモロジーの中で、いかにして環境運動が受容・実践されうるのかを記述・分析することが求められる。したがって、運動の提唱者側の視点のみならず、それを実際に実践する地域住民側の視点にも注目し、環境運動が在地で共有されている文化的コスモロジーによって意味付けられるプロセスを明らかにし、環境運動がもつ社会文化的側面を包括的かつ実証的に詳らかにするように分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヴィティレヴ島スヴァ市にある南太平洋大学のInstitute of Applied Scienceは、ダワサム地域でワークショップを行い、当該地域でのFLMMA実施が決定した。このワークショップを主催した当大学研究員へのインタビュー、そこで使用された資料の収集を行い、南太平洋大学側が、ダワサム地域に共有されている伝統や神話、および「悪魔」などのキリスト教に由来する概念を駆使して、FLMMAを実施する利点を地域住民に説明したプロセスについて、当初の計画通り分析を進めることが出来た。また、FLMMAの活動を多角的に理解するため、他地域で同活動を実施しているNGO組織などへのインタビューの書き起こしも予定通り進めることが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
フィジー諸島での現地調査を実施する予定である。その際、南太平洋大学や政府機関(先住民所有地漁場委員会、フィジー言語文化研究所など)にて、関連する文献資料や統計資料の収集を計画している。特に本研究は、個人が実施するミクロレベルでのフィールドワークに立脚するため、個別のフィールドを越えた、俯瞰的な視点を放棄しないように留意する必要がある。そのためにも文献研究をフィールドワークと並行して行いたいと考えている。
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