本研究は、フィジー諸島にある南太平洋大学の Institute of Applied Science(IAS)が、ダワサム地域において実施した沿岸資源保護活動 Fiji Locally Managed Marine Area(FLMMA) に着目した。特に、ダワサム地域住民が IAS が提案した当該活動の導入に合意した背景に、ヴィティレヴ島東部のナウソリ市周辺に活動拠点をもつペンテコステ系キリスト教団体 Covenant Evangelical Church of Fiji が、当該地域の一村落であるナタレイラ村で、フィジー土着とされる種々の儀礼用具を民家から没収・焼却した後、その焼却地に十字架を立てる「土地浄化儀礼(Healing the Land Process)」を実施したことがあった点を明らかにした。すなわち、本研究は、ダワサム地域における FLMMA は、当該地域の儀礼的秩序が新興の教団が実施した土地浄化儀礼によって破壊されたという理解が拡がり、その秩序を再形成する鋳型として受容・実践されたことを、活動参加者へのインタビューデータの分析などを通じて詳らかにすることを通して、自然環境の保護・保全に関する活動が、個々のコミュニティにおいては多様な価値付けを伴って受容・実践されること、自然環境が在地の価値体系の中で理解される文化的概念であること、したがって、「効果的」であるといえる資源保護活動の実施をする上では、それを実践する当該コミュニティにおける社会文化的背景についての考察が重要であること、以上について明らかにした。
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