研究課題/領域番号 |
18K12594
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
神野 知恵 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 特任助教 (20780357)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 伊勢大神楽 / 門付け / 家廻り / 民俗芸能 / 獅子舞 / 農楽 |
研究実績の概要 |
昨年度にひきつづき、伊勢大神楽の各地での回檀への同行調査を重点的に行った。調査は滋賀県、三重県、福井県、岡山県、香川県、兵庫県で行った。本年度は長引くコロナ禍のなかで、地元の人々が神楽師に対して行う接待が制限されるなど、回檀に様々な影響が見られた。これについては、東京外国語大学AA研コロキアム「コロナ×フィールド座談会:コロナ状況下のフィールドとフィールドワーカー」(9月13日)や、早稲田大学人間総合研究センターシンポジウム「ポストコロナの祝祭を考える―伝統、ヴァーチャル、「生感」―」(11月6日)にて発表を行った。さらに、本年度は映像民族誌「それでも獅子は旅を続ける~山本源太夫社中伊勢大神楽日誌~」を完成させ、研究者の視点から見たコロナ禍での伊勢大神楽の現状をまとめた。次年度以降この映像を活用して更なる研究成果の発信を行っていく。 加えて、文献調査を行い、各市町村の地域誌等に見られる関連記事を収集した。これらの調査を通して、近現代における伊勢大神楽の活動の変遷を探った。その結果、①交通(徒歩、列車移動から自動車へ)、②制度(鑑札制度・宗教法人化等)、③ヤド(宿泊や食事の接待を行う家々の継承や増減)、④地域の芸能や祭礼文化との相互関係などに大きな変化が集約された。また、伊勢大神楽の家元である森本忠太夫家所蔵の一次資料のうち、大正末期・昭和初期の帳面の整理を行った。これによって、伊勢大神楽の檀那場が近代に様々に変化してきたことがわかった。調査結果は、投稿論文等に掲載する準備を進めている。 その他にも伊勢大神楽に影響を受けたとされる獅子舞団体のインタビューを行い、その影響関係や、演目・囃子、活動形態の共通性などについて調査した。比較対象となる韓国の門付け芸能の研究に関しては、2021年度に渡韓して共同研究会が開催できなかったため、助成期間を延長して本研究を引き続き行うこととなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
伊勢大神楽を対象とした国内調査は、コロナ禍の影響を受けながらも部分的に行うことができた。比較対象である国内の他の芸能や、韓国の農楽については、現地調査・文献調査ともに遂行が非常に難しい状況であった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実施計画は次のようである。まず、韓国研究者との共同研究会開催を目指す。2021年度に渡韓して共同研究会を行う予定であったが困難だったため、助成期間を延長した。今年度は、オンラインにて韓国研究者と共に近現代の巡行芸能に関して日韓の状況を比較した研究会を開催する。可能であれば渡韓して対面で行うことを検討する。 また、2021年度に制作を行った伊勢大神楽の映像民族誌について、本年度は複数回の上映会を行う予定である。とくに撮影地である大阪府松原市では10月に上映会を予定している。上映の場で神楽師や、調査地のインフォーマント、地域住民、国内外の映像人類学研究者、芸能研究者らとの対話の時間を設け、地域ごとに異なる伊勢大神楽の受容の姿について知見を深めたいと考えている。 さらに、伊勢大神楽と、家々を廻って演じる芸能(徳島県の阿波木偶箱まわしや三陸沿岸の廻り神楽、韓国の芸能)との比較を行うため、伝承者や研究者を招いてオンラインでの共同研究会を開催する。昨年にも開催を予定していたが、オンライン環境等の問題により開催が困難であった。本年度はコロナ禍の状況を見つつ、対面・ハイブリッドでの共同研究会を開催し、これらによって得られた研究成果を、大阪大学出版会より共著書籍として出版予定である(本年度末刊行予定)。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、年度中に予定していた調査を実施することが出来ず、次年度に繰り越して実施することにしたため。
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