研究課題/領域番号 |
18K12594
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
神野 知恵 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 特任助教 (20780357)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 伊勢大神楽 / 門付け / 家廻り / 民俗芸能 / 獅子舞 / 農楽 / コロナ / わらべうた |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き伊勢大神楽の回檀調査と文献調査により各地への影響を検討し、大きく2点の成果を得た。ひとつは、伊勢大神楽に関連するわらべうたに関してである。伊勢大神楽についての描写を含む数え歌が滋賀県を中心に分布しており、その変化形が関東地方を含む全国各地に伝播していることが、市町村誌や現地録音資料からわかり、伊勢大神楽が地域文化に及ぼす影響の大きさや、歌による記憶・記録の在り方が明らかになった。これについては、東洋音楽学会大会で発表を行い、現在投稿論文での発表を準備している。もう1点は、継承者がおらず平成初頭に回檀を中止した松井嘉太夫社中についてである。松井の回檀地域のうち福井県の若狭湾周辺では、30年経った今も地域住民が松井について鮮やかに語る。宿泊や食事を担っていた「ヤド」の人々や、松井家の遺族へのインタビュー、松井の姿を模して地域青年が行う獅子舞行事の存在を通じて、松井嘉太夫という個人が地域に与えた影響の大きさを知ることができた。このように廃業した社中が地域に残した影響・記憶・記録について今後考察を続けていく。 また、国内外でコロナ以降の開催となる家廻り(門付け)行事調査を再開した。とくに三重県四日市市での獅子舞による家廻り行事の調査では、伊勢大神楽が桑名や四日市から全国へ巡行するようになった背景にこの地の獅子舞文化があったということを知ることができた。今後は伊勢大神楽の発生の土台となるような獅子舞文化と、後世に影響を受けて発生した獅子舞との双方を検討していく。また、韓国済州市楸子島で家廻りの農楽の行事を調査した。コロナの影響で縮小されているものの、地域のつながりや芸能団体の活動資金の維持のために門付けが非常に重要な役割を担っていることが語られ、日本での状況との共通点が多くみられた。韓国の門付け芸能の近現代の変遷に関しては、助成期間を延長して共同研究会の開催を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
長引くコロナ禍の影響を受け、比較対象である韓国の農楽の近現代での変化について現地調査および共同研究会を予定していたが遂行が難しい状況であった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度上半期に、韓国研究者や日本の家廻り芸能の担い手と共同で近現代の専業芸能者による巡行芸能に関して日韓の状況を比較した研究会をハイブリッド形式で開催する。これらによって得られた研究成果を、投稿論文等で報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、年度中に予定していた調査を実施することが出来ず、次年度に繰り越して実施することにしたため。研究費は共同研究会開催費用、報告書印刷などに充てる。
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