研究課題/領域番号 |
18K12595
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
田村 うらら 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (10580350)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 遊牧民 / ユルック / 人類学 / 文化復興 / トルコ共和国 / モノ研究 / 経済人類学 |
研究実績の概要 |
本研究は、モノ研究と経済人類学の視点から、トルコの「遊牧民」の現代的布置について明らかにすることを目的とする。ユルック(トルコ遊牧民)を自認する人々の過去数十年の変化の過程に着目し、遊牧民を広く遊動-半遊動-移牧-半移牧-定住の連続のなかで捉えなおすことを通して、本質主義的な遊牧民研究に優勢な「消失の語り」を克服し、現代に生きる遊牧民とその生活実態を詳らかにすることを目指してきた。 当該年度は、新型コロナウィルスの世界的流行が若干の落ち着きをみせ海外渡航が緩和された時期があり、9月に実に3年ぶりにようやく調査対象国であるトルコ共和国でフィールドワークを実施することができた。現地事情の様々な変化に戸惑い驚くことも多々あったものの、本科研での積み残し課題であった、現在も家畜を飼養しながら移動を続ける「現役ユルック」たちの生活実態に迫るフィールドワークを短期間ながら実施することができた。 具体的には、トルコ共和国中南部アンタルヤ県、コンヤ県、カラマン県にまたがる山岳地域において夏営する複数のサルケチリ氏族のユルック家族を訪問し、彼らの家畜管理法・現在の生活用品とその調達・管理方法、日常生活、家族・親族内の役割分担等について観察および聞取りを行ない、夏営地・冬営地・移動ルートの変遷や生活実態の変化、夏営地の土地所有者や周辺集落等との関係性について、詳細な聞取りを実施した。 さらに上記のトルコ渡航中に、「元遊牧民」と自称するウスパルタ県、ムーラ県ミラス近辺の遊牧民協会関係者、遊牧民関係の博物館展示などの調査を実施するとともに、ミラスにおける遊牧民絨毯研究者との研究交流も行なった。 成果発表としては、6月に日本文化人類学会で分科会内の個人発表を行なったほか、4項目を執筆した『イスラーム文化事典』(丸善出版、2023)、トルコのラクダ相撲用のラクダ飼養を題材とした章を寄稿した共著が出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初4年計画であったが、新型コロナウイルスの影響により現地調査が実施できない期間長く、当該年度は延長1年目にあたった。9月に調査を実施し、充実したデータを収集することができたものの、まだ不足している状況である。年度末3月にも調査を予定していたが、それも2月のトルコ南東部大地震による国内全体の混乱により、見送る結果となってしまった。当初の目的達成に少しでも近づくために、さらに1年の研究期間の延長を申請するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
延長2年目となる令和5年度にて本研究課題を完結すべく、夏季に現地調査を進め、当初の目的を達成する予定である。特に上述の「現役ユルック」たちの生活実態についての調査をさらに深め、データを十分に収集したのち、生業と人生をめぐるさまざまな局面での選択・戦略について、あるいは(/加えて)生活・生業上のネットワークとその変化についての分析を行なう。 その成果は、国内外の学会・研究会等で発表して精緻化をはかったうえで、学術誌に投稿して発表してゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたトルコ現地調査を、2023年2月のトルコ・シリア大地震によりキャンセルとしたため、次年度に調査費用を繰越すこととなった。当初の目的を達成すべく、2023年9月ごろにトルコでのフィールドワークを実施し、本研究課題による経費執行を終える予定である。
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