研究課題/領域番号 |
18K12600
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
荏原 小百合 北海道科学大学, 全学共通教育部, 准教授 (50719284)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 文化人類学 / 音文化 / サハ / アイヌ / 口琴 |
研究実績の概要 |
サハとアイヌの口琴音文化交流を通じた自然と音楽行為の関係性について人類学的に明らかにするため、本年度はサハ共和国に渡航し調査を実施した。 本年度は、自然と音楽行為の関係性を掘り下げるため、ホムス演奏を習得した経緯や、サハとアイヌの初期の交流についてサハのホムス(鉄製口琴)関係者に聴き取り調査を実施した。 具体的な調査内容を以下に列記する。1.1991年からのサハとアイヌの口琴奏者間の演奏交流に関して、世界民族口琴博物館創設者・国際口琴センター代表にインタビューを実施した。2.世代の異なる3名の口琴奏者に、ホムス演奏を身に着けた経緯、これまで演奏してきたホムス(製作者である鍛冶師との関係)、ホムス教育についてインタビューを実施した。3.ホムス愛好家に対して演奏技法の習得過程及び演奏活動についてインタビューを実施した。4.世界民族口琴博物館で資料調査を実施した。 この調査から、著名なホムス演奏家たちがホムス演奏を習得した経緯や、世代をまたいだ指導の実践、鍛冶師との関わりなどが見えてきた。また、ヤクート・サハ共和国(1991年当時)で、初めてアイヌ民族のムックリ(竹製口琴)演奏を聴いたホムス演奏家や聴衆が、昨日のことのようにその新鮮な印象を記憶していることが浮かび上がり、互いの口琴演奏に接し、音色・楽器の素材の違い・口琴とヒトの関わり・自然を音写する互いの奏法などに深い関心を抱き、互いの地域を訪問し合う相互交流が開始された経緯がわかってきた。 本成果の一部を「サハとアイヌの音楽交流」(永山ゆかり・吉田睦編『アジアとしてのシベリア-ロシアの中のシベリア先住民世界』pp.214-233,勉誠出版,2018年)に反映した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度に予定していたサハでの聴き取り調査は、当初の予定通り順調に実施した。インタビュー資料の整理、収集した文献資料の整理もおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
1.サハ共和国での聴き取り調査を実施する。具体的には、ホムスを製作する鍛冶師にホムス製作過程での鉄との関わりと文様などの文化的な知識の継承についてインタビュー調査を実施する。その際、サハの自然と楽器の連関について、どのような考えを持ち、実践に結び付けているかを集中的に聴き取り調査を行う。 また、トーキング・ホムスの実践において、伝えるのは言葉だけなのか、この奏法で実現する発音原理の理解と、この奏法時に言語以外で含まれる要素の有無について、ホムス演奏者たちに詳しく聴き取り調査を行う。 2.関係資料の収集を世界民族口琴博物館とサハ共和国国立図書館で行う。 3.道東標茶町塘路口琴研究会「あそう会」のサハとの演奏交流状況について、これまでの写真資料の整理や関係者への聴き取り調査から明らかにする。 4.阿寒湖畔のムックリ演奏者たちとサハのホムス奏者との演奏交流に関する聴き取り調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初平成30年度内に予定していた阿寒湖畔でのムックリ演奏者へのインタビュー調査については、スケジュール調整によって31年度内に実施するように変更した。標茶町塘路口琴研究会「あそう会」の会員への聴き取り調査については、当初令和2年度に予定していたが、会員との連絡で平成31年度4月に実施することとなった。
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備考 |
1.荏原小百合「シベリア・サハとアイヌの音楽交流、口琴ホムスを通じたサハ人の自然認識」北大人類学フォーラム2018、2018. 2.荏原小百合「北の旅日記 サハ音楽院の子どもたち」『Arctic Circle』第110号,春号,北海道立北方民族博物館友の会・季刊誌,北方文化振興協会、2019.
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